カレーライスは飲み物である。
――― ウガンダ・トラ
2009年4月の上旬、僕の所属するアマチュア劇団は
木更津というローカルな場所で演劇公演を行っていた。
毎回役者として参加する僕だが、今回は就職活動などあったので
練習には参加せず、仕込みや当日スタッフだけを手伝っていた。
当日の僕の役割は受付だ。会場の入り口でお客さんに
パンフレットを配ったりするあの役目だ。
公演が始まってから遅れてくるお客さんもいるので、
公演中も会場の外で待機していなければならない。
この待機している時間が問題だ。
実際、公演中にお客さんが来ることはほとんどないので、
別段やる仕事はない。1時間半近い公演の間、
時間を持て余してしまうのだ。
幸い、受付は僕一人ではなく同じ劇団の女の先輩が居合わせてくれたので
HKT だけは回避することができたが、それでも1時間半は長い。
(※HKT : 「ハイパー孤独タイム」の略)
その先輩と雑談して過ごすというのも、公演中にやるにはナンセンスだ。
まあ僕は自分で言うのも何だが想像力が豊かな人間なので、
創りたいゲームとか音楽とか誰も見たことのない幻の大陸なんかのことを
想像しているだけで1時間半くらい余裕で過ごすことができるのだが、
想像だけで時間を過ごすというのもあまり建設的な行為ではない。
何をしたものか… 悩みながらふと目をやると、
受付のテーブルには紙とペンが置いてあった。
そうだ、絵でも描きながらインスピレーションを高めるとするか。
僕は未来を切り拓く左手でペンを取り、絵を描き始めることにした。
では、何を描こうか… 考えながら隣の先輩に目をやると、
先輩はそのキュートな瞳でうどん屋の値段表を眺めていた。
何でも、彼女は現在うどん屋さんで仕事をしているんだそうだ。
トッピングのメニューがたくさんあって、覚えるのが大変らしい。
なるほど、うどんね…。
そう思いながら僕は、とりあえずうどんの絵を描いてみた。

さほど美味しそうではないが、まごうことなきうどんであろう。
さて、次は何を描こう。ここからどこに向かおう。
「うどん」というアイディアの種をどうやって育てていこうか。
創作意欲に掻き立てられた僕の右脳のニューロンが今、激しく発火し始める。
うどん… 麺類…
そう言えば、麺とご飯を一緒に食べる「ラーメンライス」ってのがあるよな…
でも「うどんライス」は聞いたことないよな…
うどんとご飯か… 合わなそうだな…
でも…
無いものを生み出すのが創造だ… よし…
やってみよう!

うどん丼
おおっと…。
これはいきなりやっちゃった感が満載だぞ。
味の濃い焼きうどんとかだったらまだアリかな…。
「焼きそばパン」とかは主食+主食で成り立ってるもんな。
ん? 焼きそばパン?
待てよ…。つまり世の中の食べ物は、
「主食と主食を組み合わせて新たな主食を作る」
ということが出来うるのか。
ラーメンライスしかり、焼きそばパンしかり、力うどんしかり。
ということは、この「うどん丼」をひとつの主食とみなせば、
さらにもう一つの主食と組み合わせることができるんじゃないか!?

うどん丼サンド
なるほど。
これは確実にやっちゃったな。
「焼きうどんサンド」だったら普通に美味しいかもしれない。
だがこの場合、うどんだけじゃなくごはんまでついてくるのが
不用意な親切というか、何とも迷惑な感じだ。
しかし今までに、「3つ以上の主食を組み合わせる」というのは
あまり無かったんじゃないだろうか。
だとしたらこれは新しい試みだ。
もうこの時点でかなりイッパイイッパイな感じだが、
果たして3つ以上の主食でも組み合わせられるのだろうか?
「主食はどこまで主食を内包することができるか」。
僕はこの問題に、真剣に立ち向かってみることにした。

面倒くさいのでとりあえず包みました。
そう、実はこの「主食on主食」は、このように
「まるごと包んで外観の複雑さをリセットする」
という奥義が使えるのだ。
これを駆使すれば、どこまでも行ける気がするぜ!

ご飯に添える。
(この中華まんの中には、うどん丼サンドが入っています。)
そしてこれをまるごと卵で包めば、あら素敵。

オムうどん丼サンドまんライス
さて、次はどうしよう。もう一度パンの方向に持っていってみるか。

オムうどん丼サンドまんライスバーガー
カラフルで綺麗だネ!
だがこんなもんじゃ終わらないぜ!

ダブルオムうどん丼サンドまんライスバーガー
…と、ここまで
うどん、丼もの、サンド、中華まん、オムライス、バーガー
と様々な主食系を適用してきた。

だがここでまさか巻くとは思わなかったろう!
のり巻きで巻かれたこのバーガーは、丼めしにうどんがのったものを
パンでサンドしたものを中華まんの生地で包んだものをご飯に添えて
まるごと卵で包んだオムライスを2つも挟んでいるのだ。
もう自分でも何を言っているのかわからない!

焼きそばにのせてみました。
いやー、もうとどまるところを知りませんね。
この何者の制約も受け付けない、自由な感じがいいですね。
かなりごちゃごちゃしてきたので、
ここいらでもう一度例の奥義を使っておきましょうか。

ダブルオムうどん丼サンドまんライスバーガー
巻き焼きそばグラタン
グラタンと来たら、次はこんな感じかな…

ダブルオムうどん丼サンドまんライスバーガー
巻き焼きそばグラタンパイ
いやはや、もう何でもござれい。
こうなりゃヤケだ!!

ダブルオムうどん丼サンドまんライスバーガー
巻き焼きそばグラタンパイカレー!
どうだろう。かなりカオスなことになってきたが、
主食で主食を包むというこの「主食の入れ子構造」は、
思考の上でならばいくらでも続けていくことができる。
それどころか、中を作って外堀を埋め、ボトムアップ方式で
少しずつ壮大なものに仕立てていくというこの手法は、
実践的にも十分に使える技なのだ。
「うどん」が作れれば、次に「うどん丼」を作ることができる。
「うどん丼」が作れれば、次に「うどん丼サンド」を作ることが
できるというように、1つずつ技術を重ねていくことによって
最終的にとても大きなものができる。
ディスプレイの前の君も、素晴らしいとは思わないか。
創作における無限の可能性… 僕はロマンすら感じる。
と、ここまで考えたところで公演が終わる時間になってしまった。
盛り上がってきた空想も、残念ながらここで打ち止めにしなければならない。
もし実際にこの「主食の入れ子構造」を料理で作るとしたら、
どこまでなら作れるだろうか。
最初のうどんをめちゃくちゃ小さく作っておけば、
オムうどん丼サンドまんライスくらいまでならいけるかもしれない。
この記事を見て、そんな無謀な挑戦をしてくれる猛者が現れたら面白い。
さて、それでは本当にお別れだ。
ちなみに、今回のこの
ダブルオムうどん丼サンドまんライスバーガー巻き焼きそばグラタンパイカレー
だが、

シメとして鍋にぶっこんどきました。