俺DTM2
2005.04.01
電車に乗って少し揺られて、僕はちょっとだけ遠出をした。
僕の住む所よりはずっと都会らしい場所に降り立つ。
その近くに住んでいた友人に来てもらい、二人でぶらぶらと買い物に出かけた。
僕はDTMというものに興味がある。
デスクトップ・ミュージック。今の時代ではほとんど
コンピュータを使って作曲することを言う。
クオリティが演奏の技術に左右されなかったり、
色々な音色を使えたりするという利点があるが、
やはり いいものを作るためには相応の苦労を要する。
また、大抵の音は生音ではなくシンセによるものを使うので、
音源というものが必要になる。パソコンにデフォルトで入っている
MIDI音源などでは音の品質が悪いことが多い。
僕はソフト音源を使用しているが、それでも限界を感じる。
DTMに関しては全く初心者な僕だが、最近ちょっと
ちゃんとした音源も欲しいと思うようになってきた。
しかしながら、DTMで使われるちゃんとした音源というものは、
高い。
音源でなくとも、シーケンサとかミキサーとかリズムマシーンとか、
僕にはさっぱりわからないような周辺機器もかなり高価だ。
そりゃそうだ、プロが使うような物だ。
安いものでも、
最低3万くらいはする。
もともとそんな大きな買い物をする勇気もなかったが、
一応万が一のことを考えて、バイトで貯めた金をおろして3万ほどの
金を持ってきておいた。友人と一緒に電気屋や楽器屋を見て回る。
流石に都会の方の楽器屋には、音源やら何やらがちゃんと売っていた。
しかし値段は予想通り、僕のような人間にとっては高いものばかりだ。
5万とか10万とか。何やら色々なボタンとディスプレイのついた
キーボードなど、30万近くもする。
まあバイトのおかげで月3万以上の収入はあるものの、
自分で貯めた金だからこそ 安易に使うのには恐れが生じる。
こりゃ、僕なんかは手が出せない世界だよなぁと思いながら
高価な商品を眺めていると、
近くに居た店員が僕ら二人に話しかけてきた。
何やらパッと見、
全体的にマギー審司な雰囲気の店員。
気さくに、
それでいてヘコヘコしながら、
「あ、どうですか、良かったらカタログでも」
と笑顔で必死に売り込みをしてくる。
「あ、なんか分かんないことあったらどんどん聞いて下さい」
と親切な
マギー審司。
僕らも適当に受け流すが、彼はさらに話しかけてくる。
売り込みというよりも、
なんか話さなければいけないという
必死さのようなものを感じる。
「あの、やっぱり、こういうの見てるってことはその、
音楽とかやってらっしゃるんですか?」
マギーの問いに、友人の方が適当に答えてくれている。
僕はあまり関わりたくないので、カタログを読むことに専念して
会話の対象から外れることに徹する。
「ああ、まあ一応、昔ピアノを」と友人。
この友人も昔ピアノをやっていて、むしろやっていた期間は
僕よりも長い。まあ僕はもう今はピアノなど全然弾けないわけだが。
「そうなんですか!
いやー、ピアノとかできる男の人って、カッコイイですよねぇ」
と、店員。
何だろうこのマギー審司は。
何だかこのシックな楽器屋には似つかわしくない感じの
審司だ。
“店員”特有の下手に出る感じではなく、上司の機嫌を取ろうとする
若者のような、そういう雰囲気を持っている。
しかもホラ、気が付けば彼の手は
「どうもどうも」の形だ。
まさに
「課長、いい酒処があるんでヤンス」という感じを思わせる。
「どうもどうも」の形で下手に出る楽器屋店員
「あ、やっぱりピアノやってるとキーボードなんかも
その延長みたいな感じでできるんですかね!?」
とマギーはさらに僕らに声をかけ続ける。
ちょっと引き気味になった友人が、俺を見ながら
「ああ、こいつの場合はパソコンとかでやる…」
と言うと
「え、パソコンでですか!凄いですねぇ!」
と、
マギーは嬉しそうだ。
待て、おかしいぞ。
本来店員と言うものは
客に質問されるべき立場に
あるんじゃないのか。
むしろ客である僕らが質問されてるぞ。
相変わらず彼はまだ
「あ、なんか音とか聴きたかったら是非言って下さいよ!」
とニコニコしながら言っている。
憎めない。
決して憎めないキャラではある。
むしろ非常に好感が持てるくらいだ。
5年に1度の逸材なんじゃないかと推してやってもいい。
しかし何か気になる。
何か普通じゃない感じがある。
何というか、こう、まだ馴染んでいないというか。
僕らにそんな疑問が浮かび始めた頃、彼は究極の一言を放った。
「いや自分も実は新人でしてね。
全然分からないんですよね!」
ええと、マギーよ。
何 故 、 話 し か け て き た。
そうか。4月だから、新入社員が多いのか。
だからこんな
うっかり八兵衛な初々しい従業員が
居るというわけか。いくら4月1日だからと言って、
まさかコレ、エイプリルフールネタってことは無いよな。
素だもんな、このマギー。
うん、ウソ偽りないわ、この男に。
そこで、ちょっと彼を試してみることに。
一体何も分からないと自分で明言しておきながら、
何故こんなにも親切に対応できるのだろうか。
例えば僕が
「この機材の音を聴いてみたい」と言ったら
きちんと対応できるのだろうか。
そこで僕は言ってみたんだ。
そこにあったキーボードを指差して、
「この機材の音を聴いてみたい」と!!
「あ、はい! じゃ、今係りの者を呼んできます!」
→ マギー、失踪。
そ、そう来ましたか。
その後なんか数人の従業員
(ちゃんと従業員っぽい人達)が
わらわらやって来ましたよ。
うわー。
や、やるなマギー。
思わずなんか怖くなって逃げ出しちゃったじゃないか。
ということで、僕は楽器屋で面白い従業員に出くわしたのだった。
音源を探していたことなど忘れさせてくれる、素敵な従業員だった。
しかしまたその後色々見てたら
マギーに遭遇。(きゃー!)
マギーは何かを言いたそうにこちらを見ている!!(きゃー!!)
仲間にしてあげますか? はい いいえ
ニコニコしながらまた何か言ってきたので、今度はちゃんと
受け答えてみた。
「いやあの、音源モジュールを探してるんですけどね、
僕も初心者で全然分からなくって、はは。」
「はい!えーと、音源モジュールとは?」
「え? ああいや、つまり、コンピュータにつなぐ外部音源ですね」
何で俺が答えてるの!?
何で俺が教えてあげてるの!?
どういうこと!?
それは貴方が答えるべき
ことでしょマギーさん!!
びっくりしたのも束の間、
「ああ外部音源ッスかー!
いやー、全然分かんないッスねー!!」
まあその後
僕の方が普通に帰りましたけどね。
とにかく音源とか高いんで、趣味レベルの僕が買うのは
もったいないなぁと思った、ってのが今日の結論かな。
その後色々歩いたが、コレというものは無し。
コレという従業員も無し。
(それが普通です)
3時頃、友人と別れて地元の方に帰った。
しかし前から姉がキーボードが欲しいと言っていて、
キーボードってのは要するに演奏するアレのことで、
MIDIINとかOUTとかついてるのが多いから
あればシーケンサと連携できて便利なのかなぁと
僕も考えていたので、帰ってからその後キーボードを買いに行った。
楽器屋を2軒回ったが、ろくなキーボードもなし。
そこで大きい電気屋に行ったらYAMAHAのなかなか良さそうなのが
あったので、僕と姉と母の投資でそれを購入することに決定。
しかしこのキーボード、MIDIINとかOUTとか端子がついてなくて、
代わりに
USB端子がついている。果たしてこのUSBでパソコンと
つなげて連携できるのだろうか。一応
「PCと手軽に接続!」と謳っているが、
知識が無いので確証が持てない。
姉さんがPCにつないでPCで録音したいようなので、それができなければ
買う価値が大きく下がってしまう状況だった。
そこで、店員に聞いてみることに。
レジの方に行くと、
若い兄さんと
若くないオッサンが居た。
二人に向かい、
「すみません、キーボードが欲しいんですが」
と呼びかける僕。
案の定、オッサンの方がこっちに来ました。
ち、ちくしょう、こっちが来たか。(ぁ
いやしかし、人生経験が長い方が知識があるに違いない。
そう自分に言い聞かせながら、キーボードの所まで歩いていく僕。
後ろで何やら
無線でしゃべりながらついてくるオッサン。
何だよ、何話してるんだよ。
何部下怒ってんだよ、俺が怒られてるみたいじゃんかよ。
キーボードのところまで来て、商品を指しながら
「すみません、これUSB端子搭載って書いてあるんですが、
そのコードって標準でついてくるんですか?」
と聞くと、オッサン、カタログを見ながら
「んー、それはねぇ、オプションって書いてあるからねぇ…」
(フェードアウト)
おいおいおいなんか凄い自身なさげだぞこのオッサン。大丈夫か。
「別売りですか。どういったケーブルが必要なんですか?」
と聞くと、
「んー、これですねぇ、ここに書いてあるやつですねぇ…」
(フェードアウト)
見ると、見せられたのは
USBMIDIインターフェース。
おお、これならMIDIIN・OUTとつなげられるってことだな。
ひとまず安心し、尋ねてみる。
「ちなみにこのケーブル、この店で売ってますかね?」
「いやねぇ、うちはこういうものは扱わないからなぁ、別途注文ってことになる…」
(フェードアウト)
ダメだ。このオッサン、きっとこのケーブルがどういうものかをまず
絶対に理解していない。まあ電気屋で働いているというだけで
みんな全般に詳しいなんてことはないだろうから仕方ないが、
このオッサンの場合
もうなんか全体的に理解していない気がする。
とりあえず僕の地方にある電気屋ではそんなものは扱ってないので、
ケーブルは諦めて商品は今買っておくことにした。
定価4万。買値は3万ちょっと。
61鍵盤で、音色数は500いかないくらい。
タッチレスポンス
(鍵盤を叩く強さで音の強さも変わる機能)もあるし、
音とデザインは割りといい方だったので良かった。
その後家に帰り、色々調べてみた。すると、
USBってのはただのUSBでデータ送ったりするくらいで、
MIDIインターフェースなどつなげないことが判明。
う、うわ。あのオッサンに騙された。
やはり田舎の電気屋のオッサンの言葉なんて
信じてはダメということか。
(全国チェーンの店なのに)
しかしスペック結構良かったのに、MIDI端子が無いとは。
最近のなら大抵ついていると思い込んでいたのだが。
まあケーブル買って出力からパソコンのマイク入力につないで、
強引に弾いたのを録音するみたいなことは試行錯誤の上に一応できたので、
その点は姉の期待を裏切らなくて済んで良かったかと。
モノラルだし音質悪くなるけど仕方ない。
姉さんはソフトで打ち込みとかするの面倒らしく、
また僕と違ってピアノは今でも趣味で良く弾いているので、
リアルタイムレコーディングがいいみたいだ。

こちらが購入したキーボード。結構デカい。狭い部屋に、存在感がある。
MIDIキーボードにもならず、ましてや音源にもならないが、
僕は和音やメロディを探すのに使おうかなと思う。
またヘッドホンが使えるので夜でも弾けるから、今さら何か
曲を練習するのもいいかなとも思う。
とりあえず遊ぶには上出来だ。
やっぱりアレですね、自分の好きな分野に踏み込んで行くのは
楽しいことですね。自分初心者レベルだし…と言っていても、
動き出さなければ何も変わらないですしね。
やってみることって、大事だと思う。
何でもそうだと思うんですよ。
ピアノでも、プログラミングでも、スポーツでも。
挑戦することを恐れていては、何も始まらない。
つまり、今日最終的に、僕が言いたいことは。
皆さん、もう分かりますよね!
店員に、気をつけろ。