いよいよ社長との最終面接だ。
ちなみに結論から言ってしまうと、僕の場合は
最終の後にまさかの六次面接があったのだが。
合わせてここに記録しよう。
最終面接の日程は4次面接から約2週間後、
2009年2月の上旬だった。
社長と1対1の面接だが、時間はこれまでより短い15分だった。
会社に行くと、予定が押していたらしく、
僕の前の人が3人くらい座って待っていた。
僕の面接は予定より大分遅れて始まったが、
その間、交流会でも見かけたメンバーと
連絡先を交換したり、話をしたりできたので良かった。
社長は自ら僕らを出迎えに来た。
社長と一緒に部屋に入ると社長は履歴書を見るなり
元気良く「小山?」と僕の名前を呼んだ。
僕は交流会も抽選漏れで参加できなかったので、
実際に社長を生で見るのはこれが初めてだった。
社長は履歴書を見ながら
「お前こんなTOEIC570点なんて書くなよー」
と笑ってきた。社長はかなりフレンドリーな方のようだ。
面接と言うか、対等な立場で語り合えるイメージ。
570点は確かに低い点数だが、こういうものは
履歴書には律儀に書くものかと思って一応書いておいたのだ。
いきなり笑われてしまったが、社長はこういうことを
さらっと言える人物なんだなぁと納得した。
「いやー、そういうのって正直に書いておくもんかと思いまして…
逆にできるのかと思われても困りますし。
それにホラ、低いのを知っておいてもらえば、
これから僕が点数を上げてったときに
お、頑張ったね、って思えるじゃないですか」
と、「勉強のできない人がテストでちょっといい点とると
すごく頑張ったように見える理論」を展開すると、
社長は「面白い奴だな」と相づちを打った。
その後は僕の自己アピール資料にも目を通してくれた。
「システム系? 即戦力って感じ?」
「まあ、そうありたいと思っています」
「いつから作ってるの?」
「小学生の頃から古いパソコンで遊んでましたけど、
ちゃんとに勉強し始めたのは高専に入ってからですね」
「何で高専選んだの?」
「やっぱりこういう分野に興味がありましたし、
専門的なことが学べて、高校よりも楽しそうだなと思ったので。」
「ふーん… 良かったね、高専に進んで。」
「はい、僕も自分に合っていたと思ってます。」
「高専専攻科から大学院ってオプションもあるじゃない。
何で就職選んだの?」
「まあそれは…」
「もうすぐにやりたいって感じ?」
「そうですね。あとはまあ経済的な理由で。」
社長は全てを聞く前に語り出すというか、
先読みの能力が高い人だなと思った。
実際話していて何度か、僕が話したい内容を
先回りして言うなぁと思うことがあり、感心した。
やっぱりこういう直観力や洞察力が、
社長という人物を経営者たらしめているのだろう。
あとは具体的な会社のサービスについてどう思うかとか、
家族はどんな仕事してるのかとか、
お父さんとお母さんは仲がいいのかとか聞かれた。
他には次のようなことを言われた。
これも見事に僕の性質を見抜いているなと思った。
「結構、徹夜とかして夢中でやっちゃうタイプ?」
正解だ。ちなみにこの就職活動レポートを記録している今も、
実は夜中の三時だ。僕はゲーム制作とかサイトづくりに
夢中になって、結構夜更かしとかしちゃうタイプなのだ。
何と言うか、やめどころがわかんないって感じ。
「そうですねー、結構…」
「やめどころがわかんないよね」
社長は見事に先回りをしてきた。
これは流石としか言いようがない。
しかもその後「まあ寝不足でも体は健康ですよ」
と言おうとしたら、向こうから
「あ、体は健康?」
とか聞いてきたから驚いた。
何だよこの人怖えーよ。エスパーかよ。
「あ、それは大丈夫です。僕わりと健康志向なんで」
と言うと、“健康志向”という単語が面白かったのか、
社長は少し笑っていた。
社長の質問は、三次面接で聞かれた質問とカブる内容が多かった。
恐らく社長と人事の取締役の人は、考え方や意見が一致しているのだろう。
「今世の中で何が一番問題だと思う?」とか、
「30、40でどんな大人になってたい?」とか聞かれた。
大体三次面接と同じように、
「情報の見通しの良さがもっと必要だと思う」とか
「あれを作った人ですか! って言われたいイメージ」とか答えた。
そして最後に、逆に質問はあるかと聞かれたので、
「社員の方には何で呼ばれてますか?」
という質問をする。
これは単に、僕が社長に質問をするときに
社長を何と呼んでよいのか確認しておきたかったからだ。
普通に○○さん、と名前で呼ばれているとのことだった。
「○○さんはどんなゲームが好きですか」
と聞くと、
「何でも好きだよ。特にパズルゲームが好き」
と返す。
テトリスとかぷよぷよとか I.Q とか、めちゃめちゃ得意らしい。
確かに言わずもがな、めちゃめちゃ得意そうなオーラが漂っていた。
平気でぷよぷよ10連鎖とかしそうだ。
「いや僕、いつか○○さんも夢中になるようなゲーム作りたいと思ってるんで!」
と強気な姿勢を見せると、社長は静かに
「すぐ夢中になるよ」
とうなずいた。
僕は「あ、パズルゲームも作ってますよ」
と自己アピール資料の Monochro Observer を示した。
それまで全体的にテンポの早かった社長も、
そのときばかりはじっと僕の資料を読んでくれた。
いや、もしかしたらただ単に資料の説明文が小さくて、
読みづらかっただけかもしれない。
「あー、こういうの好き」
と社長は言うと、
「とりあえず一人10分以上使っちゃいけないことになってるから、
貴方に関してはこの資料をよく見ておきます。」
と続けた。
サイトのURLを見つけると、ダウンロードしてやってみるとまで言ってくれた。
っていうか、明らかに15分は喋ってましたよね
という台詞が喉元まで出かかったが、
それは飲み込んだ僕は大人の対応をしたと思う。
人事の人が先ほど、
「5分のバッファを設けて15分の設定なんだけど、
いつも時間押しちゃうんですよね」
と悩ましげに言っていた姿が脳裏に浮かんだ。
まあ僕らにしてみれば、長く面接をしてくれたことはありがたい。
面白かったのは、社長が最後に言った
「選考は、他の面接官のインプットをちゃんと受けて決めます」
という言葉。
「こんなんで決まったら嫌でしょ?」
と言われたので、思わず
「それは僕も正直気になっていたところです」
と本音を述べてしまった。
社長は実際に会って話をしてみても、魅力的な人物だと思えた。
人事の人が言うには、合格ならば電話で通知があるらしい。
僕はドキドキしながら、毎日電話が来ることを祈ることになる。
合格通知の電話をまだかまだかと待ち続ける僕。
げんかつぎに、「就職:遅れるがかなう」と書かれた
今年のおみくじをサイフの中に入れて持ち歩いたりもした。
そして最終面接から一週間後、ついに僕の携帯が鳴った。
携帯のディスプレイを見ると、
会社のものと思われる番号が表示されている。
ついに来た。
明るい未来が目の前に広がる。
僕は心の奥底で多いに浮かれつつもそこは奥ゆかしき21歳、
真摯かつ紳士な態度で冷静に電話をとった。
だが僕の耳に届いたのは朗報ではなかった。
思わぬ展開に耳を疑う僕。
「あの、最終面接まで来てもらって申し訳ないんですけど…
もう一回来てもらえますか?」
一瞬、仰っている意味が全くわからないんですがと思ったが、
何でも、もう一回面接してから総合的に判断したいと言うのだ。
面接官はシステムの部長さんらしい。
完全な肩透かしを食らって力が抜けたが、
きちんと六次面接の約束を取り付けてから電話を切った。
しかし驚いた。そんなケースもあるのかよ。
頑張ってラスボスまで突破したら、その後に隠しボスがいたような感じだ。
そんなやり込み要素いらない。
おみくじの「遅れるがかなう」の遅れるというのは、
こういうことだったのか…?
六次面接はその電話から4日後くらいの、2009年2月の中旬に行われた。
六次面接までの4日間、僕は悶々とした日々を過ごした。
それはもうレタスとキャベツの区別もつかないほどに、
何だかそわそわしていた。
夜は絶叫しながら、家の前の道路を高速で走りこんだ。
それはもう時速36kmは出てるんじゃないかという程の勢いだった。
ごめん時速36kmはちょっと言い過ぎた。
引っかかるのは、5回も面接をやって、何故また呼ばれたのかということ。
普通に考えたら、
「めちゃめちゃ決めかねているってことか!?」
と疑ってしまう。
しかも同じ最終面接を受けたときに知り合った人に
メールをしたら、彼は普通に合格通知をもらっていた。
なんだこれは。俺だけか? 俺だけなのか?
僕はそのポジティブさゆえに割と自信家な性格なので、
毎度の面接はデスノートのライト君よろしく
「大丈夫だ、僕なら出来る」
もしくはアイシールドの大和君よろしく
「決まっている、受かるのは俺だ…!」
といった強い気持ちで臨んでいたのだが、
(ジャンプ好き過ぎ)
流石に今回ばかりは背水の陣、
俺は瀬戸際に立たされているのかと、
余計な心配ばかりしてしまった。
もしかしたら全ての面接の中で一番緊張していたかもしれない。
ところが、面接が始まるとそれはいらぬ心配だったように思われた。
追加の面接も、それまでと同じようなごく普通の面接だったからだ。
というか完全の僕の自己アピール資料を中心にした
専門的な内容だったので、むしろやりやすかったくらいだ。
何より意外だったのが、システムの部長さんと言うのが
落ち着いた、かわいらしい雰囲気の女性だったこと。
システムの部長というから勝手に男性をイメージしていたため、
前日の夜に数々のパターンを想定してイメージトレーニングを行った
僕の健気な努力は、見事に裏切られる結果となった。
しかし流石にシステムの部長さんだけあって、
聞いてくる内容は専門的。
「色々作ってますね。いつから作ってるんですか?」
「小学生の頃から遊びでやってましたけど、
本格的にやったのは高専に入ってからです。」
「ずっとこういうのがやりたい感じで来たの?」
「そうですね。小さい頃からこういう分野で働きたいと思ってました。」
「こういうのって、どうやって勉強してきたんですか?」
「大体、独学ですね。もちろん学校で基礎もやりましたけど。」
「独学って言うのは…」
「主に本です。専門書とか…
あとはネットで同じようなことしている人の
ソースコードを読んだりとか…」
「じゃあ、結構勉強とかって好きな方ですか?」
「そうですね。結構ノートとかしっかりまとめちゃうタイプです。
…まあ、そんな風に」(自己アピール資料を示す)
「ああ、なるほどね。
…こういうゲームのアイディアとかって、
どこから浮かんでくるんですか」
「んー… まあ普段から色々と考えてはいて、
ある時これだ! って思うパターンが多いですけど…
自分としてはインプットを沢山することが大事だと思っていて…
興味のある他人のゲームとかアートを多く見て、
やっぱり “こういうところがいいな” っていうポイントがあるんで、
そういうのが集まって新しいものが生まれるって感じですかね…」
「やっぱり、世の中のゲームとかやるんですか?」
「はい。人並みにやると思います」
「ゲームセンターとかも行ったりするんですか」
「ゲームセンターは最近は滅多に行かないですけど…
よく友達と行っているような時期もありました」
「今うちの会社に入って、どんなサービスの仕事をしたいですか?」
「まあやっぱり○○とか、○○とか…
でもどちらかと言うと、何か新しい機能を組み込む、
みたいなことがしたいです。」
「コンピュータ以外の趣味ってありますか?」
「自分は演劇をやってました。」
「あ、演劇ですか」
「はい。部活でやってて、それ以外にもアマチュア劇団に入って
お金をとって公演したりとか…」
「え、演劇って大道具とか脚本とかあるけど…」
「自分は役者ですね」
「え、役者なんですか」
役者というのは少し意外だったようだ。
「もちろんみんなで大道具も作ったりしますけど…
あ、あと脚本を書いたこともあります」
「じゃあ結構、人前に出るのは好きな感じですか」
「そうですね。むしろ人に見てもらえるのはいい機会というか…
人前で何かするのは好きな方です」
「エンジニアで人前に出るのが好きな人って、少ないんですよ」
ここでも、「エンジニア + プレゼン好き」は
好印象に働いたようだ。
やっぱりあれだ。僧侶よりも、色んな魔法が使える賢者の方が、
最終的な戦力になるっていう…
(いい加減しつこい)
「え、役者って、どんな役をやったことがあるんですか」
演劇についてここまで深く聞いてくれる人は
この人が初めてだったので、少し嬉しかった。
「一番最初にやったのは… ウサギの役でしたね」
「ウサギ、ですか(笑)」
「はい(笑)。なんかウサギがロケットで月に行く、
みたいな話で… それは先輩が脚本を書いたんですけど。
あとは館の主人とか平凡なサラリーマンとか医者とかピザ屋とか…
一番最近やったのは… あ、“普通の男”ですね」
「色々やってるんですね。
若い男の人でダンスやってるって人は
結構いるんですけど、演劇は珍しいですね」
「あ、そうなんですか?
僕もダンスやりたいんですよ!
よくダンスの番組とか観たりします」
「でも演劇ならダンスやったりとかも」
「まあ芝居の一環で多少ダンスっぽいこともやりましたけど、
でも本格的には全然やってないんで…」
続いて、開発言語のことについて聞かれた。
「一番好きな言語は何ですか?」
女性に開発言語の好みを聞かれたのは、
恐らくこれが人生で初めてだと思う。
「まあ一番よく使うのが C++ なんで、
そういう意味では C++ が慣れてますけど…」
「まあでもあれか、こういうのはツールだから、
別に Java とか Perl とか使えって言ったら使えるか」
「そうですね。実際色々、ちょこちょことやってますし…」
そこで資料を示しながら、
「それは C++ ですけど、携帯アプリは Java ですし、
Flash のゲームは ActionScript3.0 で書いてます。
最近は研究のプログラムを C# で書いてますし…」
「そうやって色々やってると、こんがらがらないですか?」
「まあ、たまにありますけどね」
「そうですよね」
「最近だと D 言語ってのがあって、個人的には興味があるんですけど…」
「そういうのがあるんですか?」
「なんか C++ の面倒なところをなくした感じというか、
スタイリッシュというか…
配列がプロパティでサイズとか持ってたり」
「へぇ…」
「マイナーですけどちょっとやってみたいなーって思ってます」
「そうですか。えっと… アルバイトとかってやってました?」
「はい。1年間ずつ、巻き寿司をひたすら作り続けるバイトと、
あとはパン屋の接客を…」
巻き寿司のくだりは、クスッと笑われた。
「あと最近は、知り合いでベンチャーやってる人から、
時々 Flash ゲーム制作の仕事をもらったりして、
アルバイトでやったりしています。
そこの資料には載っていないですけど…」
「そういうの、一石二鳥でいいですね」
「そうですね」
(僕の資料を見て)
「…あ、ここにサイトがあるのね。
ここでゲームとか公開してるんですか」
「そうですね。 …あと、一応脚本とかも」
「あ、そうなんですか」
「はい、恥ずかしい出来ですけど…(笑)
あとゲーム以外にも絵とか、自分で作った音楽とか公開してます」
「なんだか多趣味ですね。時間が足りなくなったりしませんか?」
「たしかに毎日時間が惜しい感じです。
常にやりたいことがあるというか…」
「…この作品の中で、一番ロジックがこってるのはどれですか?」
「んー… ゲームだとそこにあるやつが、
自分でタスクシステムみたいなのを組んでますけど…
色々と計算とかしてるって意味なら、
その研究で作ったプログラムかな…」
「研究のこれって、大きなデータを扱ったりはしてるんですか?」
「いわゆるデータベースとかいう意味なら、
そういうのとはちょっと違いますね…」
「ああ、そっか。いや、やっぱりうちはデータベースとかを扱うので…」
「データベースはまだ PHP でちょっと MySQL をいじってみたりとか、
それくらいのことしかしたことがないですね…
もちろんあと1年でしっかり勉強しようとは思ってますけど」
「わかりました。…ゲームプログラマとしては
自分はどのくらいのレベルにいると思いますか?」
「うーん… まあプロの人たちのレベルを体感したことがないから
何とも言えないですけど… ネットとかでゲーム制作をやっている
人たちを見ていると、自分はその中で十分戦えるかな、とは思います」
六次面接は大体このようなことを話した。
そして六次面接でもいつも通り、逆に質問はあるかと聞かれた。
「今までの5回の面接や交流会で色々と聞けたので、
基本的なことは大丈夫なんですが、
個人的に敢えて聞いてみたいことがあります」
ここで僕は、満を持して聞いてみることにした。
それは面接までの数日間、ずっと気になっていたこと、
何故僕が6回目の面接に呼ばれたのかということだ。
「その、5回の面接をやった後に僕がこうやって
もう一度呼ばれたというのは、
例えばシステム的な技術面で不安があったとか、
どういう意図があったのかなと思いまして…
やっぱり自分が客観的にどういう風に見られているのか
っていうのは今後のためにも知っておきたいので、
もし差し支えなければそこのところを教えてもらいたいのですが」
よし、聞いたぞ。思い切って聞いてやったぞ。
さあ、この人は一体どう答えるんだ。
会社側は僕のことを一体どう思っているんだ。
しかし返ってきた答えは、僕が想定したことのないものだった。
「ああ… あの、私一応システム部の部長をやってるんですけど、
エンジニアの人には全員会うようにしてるんですよ」
「えっ」
「で、まだ小山さんには会ってなかったので」
「えっ…」
「もっと早く会えてたら良かったんですけどね」
「ああ…」
なんだ、そのワケありの恋人が言う
「私たち、もっと早く出会えてたら良かったのにね」
みたいな台詞は。
「え、じゃあ特に技術面で不安があったとかそういうワケじゃ…」
「あ、そういうのではないです」
なんだか一気に肩の力が抜けた気がした。
何でも、やはりエンジニア志望と言っても入社時点で
能力にばらつきがあるから、そのスタート地点を決めるために
志望者の全体像をつかんでおきたかった、とかいう話らしい。
もちろん、それ以外にも色々大人の事情があったのだろうが。
しかしそうだったのか。いやー、無駄にドキドキしちゃったぜ。
人事の人に聞いたことだが、
僕と同じような境遇にいて6次面接に呼ばれた人は、
他にも何人か居たらしい。
恐らく僕と同じエンジニア志望の人なのだろう。
よくよく考えれば、六次面接の開始時に
「これ、何回目ですか?」
「今日で六回目になります」
「え、そんなに? すみません何度も」
なんて会話をした時点で、何かおかしい感じがしていたのだ。
そんな感じで、六次面接も無事終了。
帰りがけにエレベータの前で、また少し会話をした。
「もうここには結構来てるんですよね」
「交流会も含めて7回来てますね」
「普通のところだとそんなに無いですよね」
「そうですねぇ。大体2次とか3次とか。」
「7回ってのはレコードハイだと思いますよ。」
「あはは。そうかもしれませんね」
「ずっと千葉に住んでるんですか?」
「はい、そうです」
「じゃあ通うとしたら大変ですね」
「まあ、こっちに一人暮らしすると思いますけど…
でも、バスとか使うと意外と早いんですよ」
「バス?」
「アクアラインバスってのがあって。」
「え、そういうのがあるんですか」
そのタイミングでエレベータのドアが開き、
僕は一人、エレベータの中に入った。
「じゃあ、何だか毎回旅行に行くみたいな感じですね!」
閉じるエレベータの扉。
それが、僕とその面接官の方との最後の会話になった。
なかなか素敵なことを言ってくれる人だな、
と僕はなんだか知らないけどものすごく良い印象を持ってしまった。
言葉っていうのはその人の特性を決定づける重要な要素なんだな…。
これが、僕の長いようで短かかった就職活動の全貌である。
合格の通知は六次面接の四日後にもらった。
2009年2月下旬のことだった。
この時期に決まるのは周りの友人を見ても早い方だ。
友人には悪いが、早くに決まってしまったのは気が楽である。
残りの1年間を、就職後に必要なスキルの習得に惜しみなく使えるというものだ。
実を言うと僕は、これまでの人生で受験というものは最低限しか経験していない。
高専に入るときも、高専の推薦一本だけで、滑り止めなどは一切受けなかった。
高専専攻科も面接をしただけだし、今回の就職試験も第一志望しか受けていない。
しかも会社説明会も行けなかったので、本当に全ては面接で決まってきた感じだ。
もはやこれは、神が与えた運命なのだと思いたい。
余った時間を、自分のやりたいことに有効に使いなさいというありがたい啓示だろう。
これからも、時間を無駄にしないよう勉強や創作活動を頑張ろうと思う。
この記録はほとんど僕の考えや経験を記しただけのメモであり
第三者に対してはあまり意味をなさない代物だが、
就職活動を行う同じ学生の仲間にとって、何か少しでも
得るものがあったとしたら幸いである。