引き続き、四次面接とその後の交流会の記録。
四次面接のときは、面接後に1時間半待たされるというハプニングがあったが、
それも今となってはいい思い出だ。
三次面接から約二週間後、2009年1月の下旬に四次面接を受けた。
四次面接の面接官は、エンジニア出身の取締役の方。
時間は二次、三次と同じく30分枠だったが、実際は20分強で終わった。
面接官の方はこちらの目をじっと見てくる人だった。
一通り答え終わった後もしばらく、無言で目を見つめてくる。
それはこちらの真意を見抜こうとしているのか、
考え事をしているだけで特に意識した行動でないのかはわからない。
もしかしたらこういうのが、人によれば圧迫的に感じるのかもしれない。
とりあえず自分は、睨み返さない程度に目線を合わせておいた。
面接官の方は僕の自己アピール資料を見ながら質問を投げかけてきた。
「色々と携帯ゲームとか作ってるみたいだけど…
これ全部趣味? 仕事で作ったりしたやつはある?」
「あ、そこには載ってないですけど、アルバイトみたいな形で
携帯用のFlashゲームを作ったりしたことはあります」
「ふーん… やっぱりゲームとか好きなの?」
「そうですね… 作るのとやるのが半々、といったところでしょうか」
「この中で一番のオススメってのはある?」
「その一番上にある、GENETOSというシューティングゲームですかね。
一応、一番時間をかけて作っているのがそれなんで。」
「これって、どういうところを工夫したの?」
「うーん、もともとはアイディアありきの作品なんですけど…
シューティングゲームってのが結構コアなイメージがあるというか、
ゲームのうまい人しかやれないような印象があるじゃないですか。
自分はそういうところの敷居を下げたいと思ったので、
そのゲームはインベーダーみたいなのから始まって
だんだん今時のゲームに近づいていくようなつくりになってるんです。
そういう、誰でもやりやすいようにゲームデザインを考える、
ってところには気を使いました。
あと技術的なことで言うとタスクシステムみたいなのを組んだりしてますけど…」
今回の面接官の方は相槌を打つ代わりに、
軽くうなずきながら静かにこちらを見つめてくる人のようだ。
その後、
「うちのサービスの○○は使ったことある?」
と、その会社のサービスについて聞かれたので答えた。
「ああいうのはもう自分で作れちゃうような感じ?」
と聞かれたので、
「そうですね。まあ… できると思います」
と答える。
あとは「どういう仕事をやりたい?」とか、
「他はどこ受けてる?」とかいうよくある質問から、
「データベースとかできる?」とか、
「○○とか○○系のは作ったことある?」とか、
専門的だったりその会社に関連が深かったりすることを聞かれた。
「うちの社員、何人くらい会った?
うまくやっていけそうだと思う?」
というのも聞かれたので、OB訪問をしたことを交えて答えた。
ドキッとしたのは以下の質問。
「英語とかできる?」
正直自分はTOEIC570点くらいの英語力しかないので、
お世辞にも英語ができるとは言えない。
まして英会話の能力などは無きに等しい。
やべ、いきなり英語で質問されたらどうしようなどと思いつつ
「まだまだって感じです…
もちろん英語は大事だと思ってるんで、
しっかり勉強しなきゃとは思っているんですけど」
と素直に言うと、
「まあ俺もできないんだけどさ」
と言われたので、少しホッとした。
その後、やっぱ英語大事だよね、みたいな話になる。
「技術的なこと以外でやってたことってある?」
「自分は演劇をやってました。高専から部活で始めて、
先輩の立ち上げたアマチュア劇団に入って公演したりとか…」
「じゃあ大勢の前で話したりするのとかって得意?」
「そうですね、好きな方ですね。
プレゼンとかも好きな方ですし…
というか、時々先生からプレゼン頼まれたりもします」
「あ、そうなの?」
「はい。自分が普段作ってるそういうゲームとかを
後輩たちに授業で紹介してやってくれとか、
あと他の高専に出向いて数学の研究発表をしたりとか…」
「そうなんだ。やっぱさ、こういう仕事してると
結構人前に出て行って話せないとさ。
エンジニアはやっぱりシャイな奴が多くてね…」
就職活動をしてから気づいたが、
「エンジニア + プレゼン好き」という特性は
意外と貴重なものらしい。
あれか、ただの戦士よりも魔法も使える魔法戦士の方が、
貴重な人材だったりするっていう…
(だから例えが微妙)
「演劇とかって就職してからも続けていくの?」
「んー…、まあ余裕があればやりたい気持ちはありますけど、
でも実際仕事が始まったらそれどころじゃ
なくなってしまうと思います」
「いやホラ、うちって結構激務だからさ…」
こういう業界はどこも大体仕事が忙しいのは承知済みだが、
面接官本人の口から激務という言葉が出るとは思っていなかったので
少し驚いた。
「それはもちろん、承知済みと言いますか…」
「まあ激務って言うのはさ、要はうちも他社と競ってるわけだから、
例えば同じものを4ヶ月であげるのと3ヶ月であげるのだったら、
当然後者の方が有利なわけだよね。
だからどっちかと言うと、負けたくないから
“仕事をしちゃう”って感じ…」
「はい。それは、自分もそのような認識でいるので。」
四次面接は大体そんな感じだった。
それまでの面接よりも若干サバサバした感じで、
時間も短めだった。30分のところを22分くらい。
「じゃあ私の方から質問は以上です」
そこで面接官の方は立ち上がるような素振りを見せたのだが、
毎回の面接では最後に決まって逆質問タイムがあったので、
つい僕は
「あ、質問とかって…」
と声に出してしまった。
少し軽率だったかもしれない。
だが面接官の方は
「あ、質問ある?」
と言って、僕の質問を聞いてくれた。
技術的なことをひとつ聞くと、
かなり具体的な業務内容を含む回答を頂けた。
人によっては4次面接でケース面接と呼ばれる
コンサルタント向けの問題を出されたりもしたらしいが、
僕の場合はそういう質問はなかった。
どうやら人によって、面接官のタイプも結構変わるらしい。
質問の後、本当に面接は終了。
しかしその後、何かの手違いで僕は
1時間半待たされることになってしまった。
毎回の面接では、面接終了後に面接官の方が
帰りのエレベータの場所まで送ってくれた。
だが今回は、面接官の方は
「あ、じゃあ待ってて」
と言い残し、一人で出て行ってしまった。
時間も30分の枠を使い切ってなかったので、
「もしかしてまだ別の面接官がいるのかな」
などと考える僕。緊張しながら部屋で待つ。
ところが、いつまで経っても誰も現れないのだ。
ただただ緊張しながら座って待ち続ける自分。
5分たっても誰も来ないのでおかしいなと思いつつも、
先ほどの面接での応答を手帳にメモしながら、僕は待った。
さすがに30分待ったところでこれはおかしいなと確信。
「もしかして、なんか俺試されてんのかな?」
と思い、監視カメラを探したり、
扉を開けて部屋の外に出てみたりしたが、
何もないし、誰もいない。
まるで、よくある脱出ゲームの主人公になったような気分だったが、
いくら探しても何のヒントもアイテムも出てこなかった。
(ないとは思いつつ、リアルにホワイトボードの裏とか
机の下とかを調べてしまった僕は、無邪気な心を持った少年だと思う)
「まさか、この窓の外に見える景色の中に次の指示が!?」
と外の景色に注意を向けて見たが、
ただビルが立ち並ぶだけだ。
「でもさっき確かに“待ってて”って言ったよな…
あ、もしかして“舞ってて”だったのか!?」
と思い軽く舞ってみたが、何のイベントも起こらない。
そもそも、毎回の面接時に
「今日30分くらいの面接ですけど、後ろの時間大丈夫ですか」
と人事の人が親切に聞いてきてくれるような会社なのに、
ここへ来て予定より30分多く待たせるなんてことは有り得ない。
これは何かの手違いだな、と僕は確信した。
ところが、かと言ってどうすることもできない。
4次面接の時点では連絡先も知らされていないので、
スタッフに電話をかけることもできない。
(※緊急連絡先を教えてもらえたのはその後の交流会以降だった)
面接を行った部屋のあるフロアも、
面接官がカードキーのようなものを
かざしてから進入している領域なので、
セキュリティの仕組みがよくわからないところを
勝手に出て行くのもためらわれる。
かと言って隣で会議している部屋に乗り込んで
採用面接と関係のないスタッフに助けを求めるにも、
いささか勇気が足りない。
そもそも、まがりなりにも「待ってて」と言われた手前、
勝手に部屋を出て行くこと自体に抵抗がある。
で、どうしたものかと悩み続けること1時間半。
仕方ない、セキュリティの壁を突破して受付まで脱出するかと
決心を固めるか固めないかのそのとき、
その部屋を使う、会社のスタッフの人が入ってきた。
「あれ? ここお客さんをお呼びする予定なんですけど…」
救いの神は90分してようやく現れた。
勝手の知らない孤島で人に巡り合えた喜びを噛みしめつつ、
「あの、面接終了後に待っててって言われて、
ずっと待っていたんですが…」
と言うと、向こうは慌てた様子で連絡をとってくれた。
「え、どれくらい待ってました?」
と聞かれたので平然と
「1時間半くらいですかね」
と答えたら、向こうはひどく驚いて、謝ってくれた。
その後、スタッフの人に連れられて受付まで帰還。
人事の人がやってきて、平謝りされた。
なんだか逆にこちらが申し訳ないような気分になる。
「いやー、なんか僕試されてるのかと思っちゃいましたよ」
「いや本当に、そういうようなことは一切ないので…」
なんでも本来なら人事の人が迎えに来る、
みたいな形になっていたらしく、
その辺で手違いがあったらしい。
まあそういうケースもあるだろう。
かくして僕は無事に家へと帰ることができた。
大した問題では無かったし、友人へのいい話のネタになったので
別に良かったのだが、それにしても人生とは何が起こるかわからないものだ。
毎回何の事故もなく会社に辿り着けること自体が、
もしかしたら幸運なことなのかもしれない。
この会社は、最終面接の前に交流会というものがあった。
選考を通過して、最終面接を控えた者どうしで顔を合わせ、
社員の方10数名と軽食をとりながら歓談ができるのだ。
交流会は合否には関係がなく、そもそも参加自体が自由だ。
当然だが、僕は交流会に参加した。
気になるのは、交流会が最終面接の後ではなく前に行われるという点だ。
「会社のことをよく知ってもらう」ことが目的であれば、
最終面接に受かってから承諾書を出すまでの間に行っても良いはずだ。
交流会まで参加させてもらって最終で落ちたら、相当ヘコむだろうに。
ここで当然浮かぶ雑念は、
「交流会までこぎつけたら、もう受かったようなものなのか?」
という疑問だ。だがその問題の是非を知ったところで、
自分が最終面接を真剣に受けることには変わりはない。
僕はあまり気にしないようにした。
交流会で初めて “同期候補” と顔を合わせたわけだが、
みんな見た感じは普通の人たちだった。
1次面接の時に隣の席に座ってたので会話をしたあの女の子や、
これまでの面接で一緒に話をしながら帰った彼らは、
残念ながらその場には居なかった。
何となく現実の厳しさを思い知る。
思ってたよりも多い人数が集まっていたので、やはり
「多すぎるのも、ライバルが多いという意味では微妙?」
と考える人も居たようだ。
だがその後の交流会で
「採用の人数の枠とかってあるんですか?」
と聞いてみたところ、
「枠はないよ。枠を決めちゃうとどうしてもそこに合わせるように
とっちゃうから、質が下がっちゃう。とりたい人をとるんだ」
とのこと。なるほど、と思った。
交流会では、現場で働く社員さんたちと色々な話ができた。
話を聞くのももちろんだが、逆に自分のゲームなどを
アピールすることもできた。携帯はいつでも持ち歩いているから、
携帯アプリなどは人に見せるのに都合がよい。
というか、社員さんの中には初対面なのに
「あ、君、ゲームつくってる人でしょ」
と声をかけてくれる人もいた。
やはり自己アピール資料を作っておいて良かったと思った。
そして2時間ほどの交流会が終わる。
みんな和やかな雰囲気で帰りのエレベータを待っていると、
人事の人が「最終面接頑張ってね」と僕らに声をかけてくれた。
最終面接の面接官はその会社のラスボス、すなわち社長だ。
「いやー、ついこの前も8人くらい社長の面接受けていったんだよね」
へぇー、そうなんですかー、と僕ら。
「うん。 …4人しか受からなかったんだけどねー」
そして絶妙なタイミングで開くエレベータの扉。
それまでずっと和やかだった僕らの表情が、
エレベータに入るなり神妙になる。
降りていくエレベータの中で、流れるのは気まずい沈黙。
先ほどまでの和やかな雰囲気は、人事の人が放った氷属性の呪文
によって、一気に消え去っていた。
「え、マジっスか…?」
「交流会までやって、確率50%…?」
「ってかやっぱり、最終で落ちるケースってあるんだ…?」
と、同期候補たちは、やはり不安を隠せないようだった。
かく言う僕もそのシビアさをひしひしと肌で感じていた。
4回の面接をくぐり抜けた段階でなお、
まだ「半分しか受からないことも有り得る」
ということを知ることができたのは、
気持ちを引き締めるという意味では逆に良かった。
最終もこのまま真剣に挑もう。
いよいよ最後の就職活動レポート(5) 最終面接 ~ 追加面接編に続く。