恐らく多くの企業がそうであろうが、僕が受ける企業は
「会社説明会に出ること」が受験の必須条件だった。
2008年10月頃、僕はこの会社と大手ゲーム会社のいくつかに
ウェブでエントリーをした。自分は興味のある会社に
ピンポイントでエントリーをしたので、リクナビなどの
就活用ポータルは利用しなかった。
最初の会社説明会には当然ながら、すぐに出席の予約をした。
たまたま学校が実験の予備日で授業がない日だったので、
ラッキーだと思った。
ところが、直前になってエントリーページの方に
「満席のため抽選を行ったら小山さんは外れました」
という主旨のメールが届いてしまった。
要は席が足りないから希望者全員は呼べないということらしい。
僕は神を呪った。僕はこういう肝心なところで運が悪かったりするのだ。
中学生のときに、ジャンケンで負けて放送委員会に入れなかったことを
思い出して僕は唇を噛んだ。仕方ない、運も実力のうちなのだから。
恐らく説明会の後にエントリーシートを書かされたりするだろうから、
会社説明会に出れないということは次のタームを待つしかないのかと
心配したが、どうやら抽選にもれた人はウェブからエントリーシートを
投稿できるらしい。説明会に行けなかったのは残念だけどひと安心。
それにしても、自分達は見事に就職難と言われる時期にぶちあたってしまったものだ。
2010年新卒は採用を減らしているところが多いとニュースでも言っていたが、
人事の人いわく、やはり今年は学生の目の色が違うらしい。
学生の目の色が違うと言っても、別にハーフが増えたとかそういう話ではない。
自分が1次面接を受けたとき、人事の人が「今年は多いねー、倍くらいいるかも」
などと言っていた。会社説明会も定員の倍くらい申し込みがあったらしい。
後からネットで見かけた噂だと、その会社の倍率も去年と比べて2倍になる見込みだとか。
どうやら今年は倍というのが流行っているようだ。
「就活生倍増キャンペーン実施中!」みたいな感じか。
就活生自身にとっては大変迷惑なトレンドである。
IT系と言えど、多かれ少なかれ不景気の影響はありそうだ。
しかも僕が受けた企業はそれなりに人気があるようで、
もともと倍率の高い企業だった。
そういう意味では就職活動も普通より難しくなるが、
それも考えようによっては
「倍率が高い中で受かれば、それだけ優秀な同期と一緒に仕事ができる」
ということになる。
苦労した分の見返りは大きい。
そう思って、就職活動に対する自分のモチベーションを高く保つようにした。
あまりのポジティブさに、我ながら感心し、勇気づけられる。
これぞ正のスパイラルだ。
人間全員がこうやってプラス思考になれば、
溢れ出るエネルギーで地球も救えるんじゃないかとさえ思う。
まあ何はともあれ、戯れ言は大概にして
エントリーシートを書かなければならない。
エントリーシートは本命の企業以外にも、いくつか書いた。
どこも大体似たような内容のものを書かされる。
とりあえず一般的なところで
「学生時代に頑張ったこと」と「自分の強み」
について400字以内で書いたものをここには載せておこう。
ちなみに僕はエントリーシートは敬体で書いた。
あと他にあったのは「将来の夢」とか「10年後の目標」とか
「グループ活動の経験」とか。まあそんなものだろう。
エントリーシート「学生時代に頑張ったこと」(400字以内)
印象に強いのは、演劇の活動です。高専5年間は演劇部に所属し、
本科卒業後も先輩が立ち上げたアマチュア劇団に入り、公演を行ってまいりました。
仲間とともにひとつの作品を作り上げ、観客を楽しませることには喜びを感じました。
お互い面白いものを作りたい一心から、仲間どうし芝居の演出面などで意見がぶつかることもありましたが、
そういう時には譲歩をしつつも、自分の意見は大切に扱うようにしました。
友人と劇の脚本を書いたこともいい思い出です。
演劇の活動を通して、仲間と協力してものを作っていくための協調性と、
人を楽しませるための創作意欲を身につけることができました。
また演劇は、「作り手」である自分たちを客観的に見る能力を養うのにも最適だったと思います。
「観客は何を面白いと感じるか」という観点で物づくりを考えられるようになったのは、
いい経験だと思います。
エントリーシート「自分の強み」(400字以内)
自分のセールスポイントは「創作意欲の高さ」です。日頃から何か面白い事を考え、
人を楽しませたいと考えています。趣味もゲームプログラミングなど物をつくることで、
これまでにもいくつかの作品を作ってウェブサイトで公開しています。
作るときはアイディアやコンセプトを重視し、ありきたりなものは作りません。
また、プログラム以外のグラフィックスやBGMなども自分で制作するようにしています。
友人と遊ぶときや部活で会合を開くときなども、変わった企画を考案してそれを実行することが多いです。
部活から始めた演劇の活動も、ものづくりの一環だと自分では捉えています。このような、
新しいコンセプトを打ち出してそれを実行に移そうとする創作意欲は、誰にも負けない自信があります。
(サイトURL:http://www.tatsuya-koyama.com/oresiki.html)
学生時代のエピソードは演劇のことを、強みには創作意欲のことを書き、
一応俺式のURLも載せておいた。
恐らく何千人とエントリーしてくる書き込みを、
全て入念にチェックしてはいないだろうと思うが、
企業によっては面接時にエントリーシートを見ながら
質問をしてくることがあるらしいので、妥協はできない。
ちなみに僕が受けた企業では、エントリーシートの内容に
触れられることはなかった。
エントリーシートの提出からほどなくして、書類選考通過の知らせが届く。
2008年12月の中旬、僕は一次面接を受けに、その会社へ向かった。
一次面接だけは休日に行われた。
その日だけで100人以上は受けに来ていたと思う。
様々な面持ちの好敵手(ライバルと読む)と、
肩を並べて試験を受けることになる。
ここで、思ったより女の子も多く受けていたことに
若干、内なるテンションが上がったという事実については、
それは遺伝子に組み込まれた生命の本能的反応であるため否定しきれない。
もしかしたらこの中に居るメンバーと一緒に働くことに
なるのかもしれないと思うと、何だか不思議な気分だ。
実際、全てが終わった今だから言えることだが、
一次面接を一緒に受けたメンバーの中には、
一緒に最終面接まで残った人も居たのだ。
一次面接では筆記試験があった。
正直、筆記試験があるとは思っていなかったので少し焦った。
筆記試験はいわゆる頭の体操のようなもので、「言語」と「計数」の
ふたつに分れていた。よくあるSPIや一般常識などではない。
「言語」の内容は、長い文章があってどれが正しい要約か、とか
文章を正しい順番に並べ替えろ、といったもの。
「計数」の内容は、いわゆる頭の体操的な数学パズルだった。
暗号クイズとか、論理パズルみたいなやつ。
どちらも時間が短めで、短時間内にどれだけ解けるか、といった感じ。
まあこういう筆記試験はそんなに重要視されないだろうと思っていたのもあり、
自分は半分くらいを落ち着いて確実に解き、残り時間がなくなったところで
他を適当にマークするという戦略をとった。
残念ながら全部をスラスラ解けるほど、僕の頭の処理能力は高くなかったからだ。
その後、場所を移して集団面接に入る。
一次面接に関しては、内容を書くと企業を特定しやすくなりそうなので、
ここでは少しぼかしておく。
大まかに言うと、グループディスカッションとか自己PRをする内容だった。
ディスカッションの議題は「トヨタの売り上げをどうやって上げるか」。
自己PRは2分間くらいのフリーな形式だった。
自己PRは当然ながら、自分がアイディア志向であることを述べた。
「自分のセールスポイントは、創作意欲の高さ、です。
趣味もゲームプログラミングとか演劇とか、ものづくりに関することで、
ゲームは音楽やグラフィックも自分で作ってます。
自分は普段から、何か面白いことができないかな、と考えてまして、
すでにあるようなものは自分では作らないようにしてます。
普段の遊びなどでも、何かひとつ変わったアイディアを
盛り込めないかな、っていう風に考えます。
例えば… 前に部活の先輩の送別会をしたときなんですけれども、
もちろん普通にやっても十分楽しいんですけど、
何かそこにひとつアイディアがあれば、
普通とは違った新しい体験を先輩にしてもらえるなぁって思いまして、
そのときは「先輩を沢山の風船の中に埋めよう!」っていう提案をしました。
で、みんなで風船を買ってきて沢山ふくらませて、
当日はその中に先輩を投げ込んで… まあ喜んでもらえました(笑)。
こういう風に、自分はアイディア重視、コンセプト重視で
面白いものを作りたいなって考えてます。
この創作意欲の高さが、自分のセールスポイントだと思ってます。」
大体こんな感じで話したように記憶している。
文字にしてみると結構ある気がするが、実際話してみるとこれで1分半くらいか。
中には少し制限時間を越えて話している人がいたが、あれは印象が良くない。
面接官は忙しいだろうから、時間配分には十分に気をつけたいものだ。
ここで、前ページで示したように自己アピール用の資料を持ってきていたので、
最後にそれを出しておくことにした。
「で、今日はですね、自分の普段作ってる作品を印刷して
まとめてきたものがありますので、良かったら見て頂ければ、と思います」
カバンから自己アピール資料を出して広げると、
これは凄くウケが良かった。
むしろ一緒に受けていた他の受験者達も、
「おおーっ」と反応してくれた。
そんな感じで、1次面接は手ごたえのある感じで終了。
沢山の人が受けにくる1次面接は、
恐らく多くの学生が振るいにかけられるのだろう。
であれば、大勢居る学生の中で少しでも印象に残るような
ポジティブな言動をしておきたいものである。
そういう意味では、自己アピール資料の提示は効果的だったように思う。
また、全ての面接を振り返って言えることだが、
この自己アピール資料を作ったことは、多くの面で自分に有利に働いた。
自分の能力を視覚的に伝えられるだけでなく、
その後の面接の多くが、その資料を中心に進められたのだ。
2次面接以降、面接官が常にその資料を持っていて、
毎回その資料に関する話題が少なからずあった。
特に2次、4次、6次はエンジニア系の面接官だったので、
資料に載っている作品に関する専門的な質問がよく出た。
面接の多くを自分のフィールド上で行うことができたため、
効率良く面接の時間を過ごせたように思う。
そして1次面接は順調に通過。
2次面接は約一週間後になった。
就職活動レポート(3) 2次面接 ~ 3次面接編に続く。