ひたすら青信号の方向に進み続ける
2006-04-07
気付けば普通高校に通っていた友人達は皆卒業式を迎え、
僕は今年度から高専の4年生だ。
僕は5月生まれのため、もうすぐに19になってしまう。
19と言えばもう子供だとも言ってられない年だ。
このまま18という青春時代を
簡単に通り過ぎてしまっていいのだろうか。
18の春、何か青春できることはないだろうか。
そこで僕らは次のような企画を考えた。
「ひたすら青信号を進み続ける自転車の旅」…ッ!!
(※明らかに青春の意味を間違っています)
この企画の概要は次のようなものだ。
■ 僕が通う学校の最寄り駅である、木更津駅を出発地点とする。
■ 自転車でひたすら走り、基本的に直進する。
■ 進行方向に赤信号が現れた場合、その時青信号になっている
方向に進路を変更する。
■ 信号の無い三叉路などに出くわした場合、最も近くに青いものが
見えた方向に進む。
■ 道中、目に付く「青い物」の写真を撮る。
■ 道中、入っていい店は青い店のみ。
■ 道中、買っていい商品は青い商品のみ。
|
酔狂なまでに
「青」に固執するという斬新なルール。
(下に行くほどアホさが増してます)
青にこだわったところで
青春とかは全然関係がない気もするが、
何よりも
「常に青信号を行く」という原則によって、
いつまでも止まらないで走り続けられるという
非常に前向きな仕様になっている。
問題は、
旅の最終目的地が分からないということであるが、
これは某テレビ番組でやっている
トリビアの種とかいう
ものだと思えばよい。
今回のトリビアの種、つまりこういうことになります。
「木更津駅からその時青信号の方向を選んで
進み続けると、○○○に辿り着く」
(毎回変わるって)
ということでこの様に当ても無くバカな旅を、
春休みも終盤の4月6日、
僕は友人3人・先輩1人と共に決行することにした。
(当然ママチャリで)

家を出発する前も、ヘアスタイルをセットするのは
青いヘアスプレー。
始まりから強い意志を持って青に臨む。

家を出れば悔しいくらいの爽やかな青空。
こんな日こそ、このバカ企画をやるに相応しい。
天は味方している。

途中で見かける青に過敏に反応しつつ、
集合場所である木更津駅へと向かう。
駅に着いて、みんなが集まり始めた。
友人は全員揃ったが、
時間になっても先輩が姿を見せない。
そこでメールしてみると、
「ごめん おはよう」 という
何かを悟らせてくれる返信が返ってきた。
電話して先輩に問うてみた。
「結論からお願いします。何分で来られますか?」
「30分待って」
30分後に、身だしなみをしっかり整えて現れる先輩。
そこまで近くに住んでいるわけでもないのに、
起床から30分で集合できるという行動力を、
僕も見習いたいと思った。

そしていざ、出発だ!!
とりあえずは北上を目指して、僕らは走り出す。

お、早速青い看板を発見…
いやいや格助詞がおかしいな。

駅付近の
青い門をくぐり抜け、ひたすら直進。
細い道に入った時は青い屋根や青い看板を
見つけながら、青の導くままに進んでいく。
青いジャングルジムとか。
こういうので遊んだ子供時代が懐かしい。
あの頃は青かったなぁ。
(この旅も十分青いがな)

しばらく走っていると、広めの道に出た。
途中で赤信号に出くわしたので道を曲がり、
普段はあまり通らないようなマイナーな道を
進んでいく。
旅が始まってからまだ30分も経たない。
しかし、細い道を抜けて広い道に出たその時、
僕らの想像を絶する、重大な問題が発生した。
信号が無ェ。
まだ少ししか走っていないというのに、
いきなり
どこだか分からない境地に
辿りついてしまった。
ひたすら遠くまで続く一本道。
右には商業地帯が見えるが、
なんか左の方には
工業地帯とかいう
危険な世界が僕らを待ち受けているので、
油断することはできない。
余りにも、想定していなかったランドスケープ。
しばし唖然とし、走行を止める僕ら。
何というか、もう昼どきで腹が減ったので
早いところローソンに入っておきたい。
すると僕らを勇気づける先輩の発言。
「お、これ真っ直ぐ行けばローソンあるよ」
ローソーーーン!!
途端にやる気を出し、走行を再開する僕ら。
何たってこの旅のシステムだ。
いつ物資の調達ができるか分からない。
まして、ローソン以外の青い店が見つかる可能性など、
高専のキャンパス内で四葉のクローバーが見つかる確率
より低いに決まっている。
早いうちにローソンに入っておくに越したことはない。
今のうちに、物資の調達を…!
安心という名の商品を…!!
勢い良く進む僕ら。
そしてもう少しでローソンというところまで来た!
目の前で赤に変わるトラフィック・シグナル。
まさかの赤信号。
(ローソーーーン!!)
ローソンを目の前にしておきながら、
強制的に進行方向を90度変更させられる僕ら。
全ては、青の導くままに。
僕らの背後で、
ローソンという名の希望が
だんだんと小さくなっていく。
だがこんなところで挫けているわけにはいかない。
何しろ、まだ旅は始まったばかりなのだ。
まだ1時間も経っていない。
それにローソンと言えば全国に8000店舗を越える
有名なコンビニだ。至るところにある。
いつかこのまま走っていれば、いつかは…!
いつか、ローソンに巡りあえる時が来る…!!
僕らは走り続ける、止まることなく。
ひたすら、青の導くままに!!
で、山入りました。
え~… どうしよう。
最早、
信号とかそういう概念が必要の無い領域にまで
踏み込んでしまった。どうしたらいいのだろう。
とりあえず、近くにあった公園で小休止することにする。

こうやって木々の間から春の木漏れ日を眺めていると、
「俺達、この大事な時期に何やってんだろうなぁ…」
という
気付いてはいけない気持ちに気付きそうになるので、
僕は考えることをやめることにした。
公園のアスレチックで子供達
(4、5歳)に紛れて
遊びながらも、隠し切れない
空腹という名のマイナスステータス。
空腹ゆえに動くことがためらわれるが、
このままだと
文明の真っ只中で飢えてしまうので、
再び走り出すことにする。
青い自動販売機などを追っていたら、
ようやく公道に出ることができてホッとした。
その後もひたすら道なりに進み続ける僕ら。
どうやら方角的には順調に北上しているようだ。
何故北を目指したかというと、それはもう
ローソンに入りたかったからに他ならない。
「マジ腹減ったんだけど」
「っていうかもうファミリーマートで良くね?」
「うんいいよ、ってか十分青いよファミマは」
「ああ俺には青に見えるよ。妥協しようよここは」
などと、
もはや信念のかけらも無い発言が出るあたりが、
人間って弱い生き物なんだなぁということを
再認識させてくれる。
空腹のため、次第に口数と笑顔が減り、
青い服の女の子を見かけても誰も反応しなくなった
その時、それは僕らの前に姿を現した。
これは… このコンビニは…!!!
デイリーヤマザキだぁ…。
(赤ッ)
「マジ腹減ったんだけど」
「っていうかもういいよ、ヤマザキで」
「ほらあの、赤見た後って何か青く見えるじゃん」
などと、
ついに補色残像まで使って
店に入ろうとするあたり、
人間って悲しい生き物なんだなぁということを
再認識させてくれる。
デイリーヤマザキを見送りながら、更に進む僕ら。
え… あれは…!?
実はデイリーヤマザキの斜向かいに立っていた、
探し求めた僕らの理想郷
(ローソン)。
「うおお、ここは何としてでも青信号を渡れェェェ!!」
「みんな、速度を調整するんだ!!」
「ここは耐えろ! そして赤信号が青に変わったその瞬間!」
「今だ、進めェェェ!!!」
たかだか
「ローソンに行く」という
小学生でもできる芸当を行うために、
今年一番の真剣顔で自転車を漕ぐ僕ら。
人間って悲しい生き(以下略)
ついにその姿をお見せになったローソン様。
(敬語)
やった、これでメシにありつけるぞ!!
まあ青い物しか買えないんですけどね。
ローソンの、これでもかってくらい青いカゴが憎い。
しかしここで僕らは新たな問題に直面する。
青いパッケージの食品が、そうそう無いのだ。
もともと青のような寒色は、食欲を下げる効果があるので
主食となるような食品には殆ど使われることがない。
使われるのは、アイスやヨーグルトのような冷えたものや、
スナックやクッキーなどの一部の菓子類だけだ。
少しでも飢えを凌ぐために、空腹時にも関わらず
菓子類やキャンディー、アイスなどを購入する僕ら。
少し青い部分が入ったカップラーメンのパッケージを
手にとりながら、
それが青として認められるか
店内で真剣に議論し合う僕ら。
人間って悲(略)
全員が青いカゴに青いものばかり入れてレジに並ぶ光景は、
もはや
狂気の沙汰としか思えなかっただろう。
店員も
こんな白昼夢を見せられて、唖然としたに違いない。

こちらがみんなの購入したもの。
アイスに、チョコフレーク、さけるチーズ、
日本代表チップスなど。
青い飲み物は結構あるので、飲み物には困らなかったが、
主食らしい主食がまるで無い。
先輩は青いコーンフロスティを購入したが、
残念なことに青い牛乳が無かったので、
仕方なく「飲むヨーグルト」で代用することに。
このこみ上げて来る切ない気持ちは何だろう。
何で言うかね、全体的にブルーなんですよ。
僕らの気持ちがね!!

ローソンには、青い車がありました。
とりあえず、落ち着いて食料を消費できる場所を探すことに。
公園か何かないかなーと思いつつ走っていると、
高台の上にブランコが見える森を発見した。
幸い信号の無い場所だったので、横から回り込んで
その森の中に入ってみる。
おお、これは!
木漏れ日が心地よい素敵な雰囲気の公園だ。
木々に囲まれているので、公園というよりも
小さな森に近い。
場所も分かりにくいからか、人は全く居ず、
秘密の場所を見つけたような気分だった。

まるで絵本の世界のような絵だ。
みんなそれぞれが手に入れた食料を食べ始める。
空腹なのにほとんど菓子類しかないという哀しみを、
森の木々は寛大な心で優しく受け止めてくれた。
先輩が、
飲むヨーグルトではコーンフロスティは食えない
ということを悟る。
俺がさけるチーズを袋に入れながら
「これはいざという時のためにとっておこう」
というと、友人の一人が
「いや、いざとなったらこのアホルール取っ払えばいいじゃん」
という
とても頭のいい発言をした。
しかしながら、僕らに妥協は許されない。
ここで妥協してしまったら、それまでの僕らは
本当にただのバカになってしまうではないか。
とりあえず木に登る俺。(わーい)
またこの枝ぶりが登ってくれと言わんばかりでね。
そして葉の間から注ぐ光がホント綺麗なんですわ。
そりゃ無邪気に木登りとかしちゃいますよ。
何この神秘的な映像。
エネルギーも補給し、しばらく遊んだので満足し、
再び走り出すことにする。
素敵な公園との別れが惜しまれる。

走り続ける僕ら。
真っ直ぐな道が続くので走りやすい。
同じ真っ直ぐな道でも最初の頃に走った
何も無い道とは違い、
横に山々が見えたり頭上に桜が咲いてたりするので、
景観を楽しみながら進むことができた。
しかも食事もとった後なので、みんな元気だ。
「気持ちいい~!!」と叫びながらスピードを上げて走る僕ら。
はたから見たら気持ち悪い。
しばらく走ると、さっきまでの自然がウソのように、
灰色の街がやってきてしまった。
遠くから見ると、明らかに空気が濁っているのが分かる。
車の排気ガスなどが凄いのだろう。
だがひたすら僕らは進む。青の導くままに。
青柳通りとかいうところに来た。
大分青という言葉に敏感になっている僕ら。

クレバリーホームのキャラクター
(名前不明)。
青い。

めちゃめちゃ青い水道管のようなもの。

もくもくと進んでいると、次第に空が曇ってきた。
「青山」を目の前にして信号が赤信号になるあたり、
かなり
不吉な予感がする。

まだ千葉と木更津の間の位置にいる僕らを、
不思議な気分にさせてくれる青い看板に出会った。
実際、木更津が左方向、千葉が右方向にあるというだけなのだが、
同じ方向に千葉と木更津があるように見えるため、
まるでもう千葉を越えているかのような錯覚
を覚えさせてくれる。
看板の先の交差点で、
赤信号に出くわした僕ら。
しかしここで青信号の方向に進むと、
木更津に帰る方向になってしまう。
別に特に北上する理由も無いのだが、
せっかく走ってきた道のりを後戻りすることが
何だかためらわれた。
誰かがこんなことを口にする。
「…なあ、ここは妥協して千葉目指さないか?」
遠い空を見上げながら、赤信号をやり過ごす僕ら。
すでに色々な
精神的疲労が溜まっていたためか、
ついに僕らは妥協してしまった。
青の導きをここで、初めて裏切ってしまったのだ。
妥協したということは、前述の理論から考えるに、
今までの僕らがただのバカになったということを意味する。
黙ったまま走り出す自転車の一行。
すると走り出してから数分後、
メンバーの1人が走行を止めた。

切なそうに自分の自転車を見つめるピエール
(あだ名)。
一体彼の自転車に何が。
巨大な不安が、一同の胸をよぎる。
「まさか、パンクしたのでは…」
しかしタイヤを見ると空気が抜けてしぼんだ様子は無い。
頼む、パンクだけは勘弁してくれ…!!
あ、パンクだ。
めっちゃ金属片刺さってて、
マジ自転車デッドオアアライブ。
というかタイヤを触ってみると普通に
耳たぶくらいのやわらかさになっている。
白玉つくるんじゃあるまいし、ダメだ。これは。
このまま走行を続けたら
タイヤがバーンで
チューブがドーンで
自転車がグワシャーンに
なることは目に見えているので、
なんとかパンクを補修できる道具が買える店を探すことにする。
もう青信号がどうだの言っていられない。
強制的にルールを解除して、
自転車をひいて歩き始めた。

するとちょっと歩いたところで
運良く自転車屋を見つけたので、
そこで修理してもらうことにした。
自転車を渡すと即座に、手際よく修理を始める
自転車屋のじいさん。流石はプロだ。
自転車も回復し、とりあえずもう一度走り出す僕ら。
すぐ近くに自転車屋が見つかって不幸中の幸いだったが、
これから先、どうしたものか。
ゴールの無い道の先を遠く見つめていると、
僕の目は、一枚の青い看板を捉えた。
あれ、なんか見たことあるぞ、これ。
(デジャヴ?)
ふと辺りを見渡すと、
さっき妥協した交差点。
しかも、
今回も青信号は木更津の方向を
指し示している。
神よ、そういうことですか。
やはりルールは破ってはいけなかったのですか。
僕らがルールを破って、そして再びここに
戻ってきたというこの結果は、
なるべくしてなったことなんですね。
全 て は 、 青 の 導 く ま ま に 。
というわけで、それからはひたすら国道を走って、
普通に地元に帰った。
最終的には木更津から市原市の八幡あたりまで行ったのだが、
今日参加したメンバーの中には市原市在住のやつがいて、
そいつは今日一日で
市原市 → 電車 → 木更津市 → 自転車 → 市原市
→ 自転車 → 木更津市 → 電車 → 市原市
という
よくわからない2往復をしたことになる。
実に奇妙な話だ。
まあ何も考えず青だけを目指して何キロも走ったのは
結構面白かったので、やって良かったとは思う。
もっとも、この旅の決行後数日の間は、
赤信号に恐怖を覚えるようになったことは言うまでも無いのだが。
~ 本日のトリビア ~
「木更津駅からその時
青信号の方向を選んで
進み続けると、
自転車がパンクする」