カネボウフーズの商品に、「ねるねるねるね」という製菓がある。
水と粉を入れてかき混ぜることで粘り気のあるクリームを
作り出し、それを砕いた飴のようなものにつけて食べるという
子供向けの菓子だ。もう発売20周年になるらしい。
素晴らしいネーミングセンスにも脱帽のロングセラー商品である。

↑これ
事の発端は、俺の通う高専の購買で、この商品が売られていた
ことに始まる。どう考えても対象年齢10歳以下のこの商品が、
高専の購買に並べられているという異質な光景。それに驚きを
隠せなかった友人sは、思わずそれを購入してしまった。
昼休みに、ねるねるねるねを作る高専の3年生。
しかしながら、誰しも何故か1度は食べたことのある懐かしい味と、
自分で菓子をつくるという子供心を掻き立てるプロセスによって、
僕らは次第に(ねるねるねるねに)心を奪われていく。
そしてついに誰かがこう言ったのだ。
「なあ、巨大なねるねるねるね、作ってみたくね?」
みんなの心が急速に一つになる瞬間。
そして僕らは決意した。それを実行させようと。
そんなわけで、いつもの如く行き当たりばったりな計画を立て、
休日に学校の講義室に集まる僕と友人計5人。
ここで僕らは巨大なねるねるねるねをつくるプロジェクトを始動する。
まず如何にして巨大なねるねるねるねをつくるかだが、
ただ単にねるねるねるねを大人買いし、よせ集めるだけでは芸が無い。
高専生たるもの、1から全てを自分達でつくるくらいの精神が必要だ。
そこで、ねるねるねるねの原材料を調べてみる。
パッケージの裏の表示を見る限りでは、
砂糖、粉飴、水飴、卵白粉末、澱粉、乳糖、酸味料、
重曹、増粘多糖類、香料、炭酸カルシウム、着色料
といったところだ。
まずこれらを満たす材料の買い出しに向かった。
スーパーなどを回ってそれらしいものを買い集める。
卵白粉末の代わりには普通の卵を使う。

ところが卵を買った直後、友人nがまさかの卵投下。
奇跡的にも被害は1個の破損ですんだが、いきなり不吉な予感。
ということで購入した材料の確認。

まず、「卵白粉末」の代わりに「卵」。

「砂糖」と「重曹」。
そして「増粘多糖類」として「ペクチン」。

「澱粉」と「水飴」。

ちなみにこの水飴、何と内容量が255g。
255と言えば2の8乗マイナス1の値だ。
c言語で言えばunsigned char型で表現できる。
(知るかよ)

「酸味料」と「乳糖」の代わりとして「ヨーグルト」。
ちなみに、ヨーグルトに実際に乳糖が含まれているかは知らない。

「香料」「着色料」と、作るときの水の代わりとして、
「ぶどうのジュース」。

もちろん粉飴をつくるためのキャンディーと、
完成品を食べるときなどに使うであろうスプーンも購入。

ふきんと、混ぜるときの木ベラ。
あと卵の黄身と白身を簡単に分けられるという
ちょっとどうでもいい便利アイテム。

ボールと泡立て器も必須項目だ。

そして冒険の舞台となるのがコレ!!
10lのポリバケツ!!!
こいつの中に沢山のねるねるねるねを作るぜ!!
いや、バケツて!!!

そんなこんなでアイテムを揃え、バケツなどは外の水道で洗い、
いよいよ調理(?)に取り掛かろうと思う。
学校の講義室で、何をやってるんだ俺達は。

まずは卵白を泡立て、メレンゲをつくる。
何しろ今回、固まるメカニズムが何ら分かっていないので、
可能な限り粘度を高めておく必要がある。
だからこのメレンゲづくりは非常に重要となる。
とりあえず黄身と白身をより分ける。

黄身は捨てるのももったいないので、
(何故かスタバの)カップに入れておくことにする。

うきうき気分で卵白をかきませ続ける俺。(18歳)

しばらくして、ようやくそれらしくなってきた。

というわけで、とりあえずバケツに投入~!

何だ、コレ。
一瞬何をつくろうとしているのか忘れそうになるが、
かろうじて思い出す。

「まあ思い悩んでいても仕方ないからね!!」という
いつものノリで、手当たり次第に材料を入れていくことに。
砂糖とか澱粉とか入れてみる。

って、澱粉一袋全部入れるのかよ!!
手当たり次第にも程があるだろ。
しかし、高揚している仲間に僕の言葉は届かない。

とりあえずそこにぶどうジュースを入れてみる。
粉っぽい。すごく粉っぽいよ。
なんか色とかもおかしくなってるよ。

えっと、とりあえず困ったらバケツに投入☆

困った。
固まる気がしない。

なんつーか凄い液状になって、
せっかくのメレンゲが台無しに。

えっと、とりあえずペクチン入れたら固まるんじゃね!?
フルーチェは牛乳とペクチンで固まるらしいし!!

あと、ヨーグルトとかもいいんじゃね!?
とにかく入れて混ぜろ!!混ぜるんだ!!
そして「フルーチェの粘度=牛乳+ペクチン」を思い出した僕らは、
ダッシュで牛乳を買いに行き、牛乳とペクチンを混ぜて投入した。
もはやワラにもすがる思いである。
よっしゃ、これで…!!!

困った。
固まる気がしない。

「俺達、こんなものがつくりたかったのかな…」
不意に僕らを襲う、現実という名の黒い影。
光を見失い、絶望に呑み込まれそうになったその時、
それは唐突に僕らの前に姿を現した。

「こ、これは…」
「原材料を調べるために買った、本物のねるねるねるね…!!」
「そうだ僕ら、これをつくろうとしていたんだ。」
「忘れていたよ、一番大切なことを。」
―― 俺たちは、やり遂げなければならない…!!!
固い決心のもと、一度初心に帰ってみることに。
即ち、本物のねるねるねるねを今再びつくってみる。

はい☆
じゃあまずは1ばんめのふくろを入れるよ!
(何故か上半身裸の友人が)
次に2ばんめのふくろを入れて…
ねればねるほど、
ねればねるほど…!!

そうだ、これがねるねるねるねだ!!
執拗なまでにスプーンにまとわりつくこの粘り気!!
僕らの目指すところはここにあるッ!!
※とりあえず気休めに、バケツの中にねるねるねるねを入れてみた。
でも無駄だった。

ここに来て、なんかその日試合をやっていた
テニス部のクラスメイトが遊びに来た。
講義室で起こっている不思議な状況に、
何とも言えない表情のテニス部員。

それにしても、いくら激しく混ぜ込んだところで
一向に固まる気配を見せない。
そもそも、何で混ぜたら灰色になったのかわからない。
まあ最初から「ペクチン入れりゃ固まるだろ」とかいう
何の信憑性もない迷信だけを信じてここまで来たので、
行き詰るのは考えてみれば当たり前だ。
ちょっと使っただけで残っている牛乳を見て、
「普通にフルーチェでも作って食べて帰ろうか」的な空気
が流れようとさえしている。
何とかして、固める手段を考えなくてはならない。
澱粉とか卵白とか入っているので、
これをこのまま加熱したら固まるのだろうが、
加熱する手段も無いし、加熱したところで
それはもはやねるねるねるねの枠を外れてしまっている。
何とかして、混ぜるだけで固めたい。
スランプに陥ったので、学校の近くのドラッグストアに
救いを求めて1人向かう俺。
するとそこでフルーチェを見かけた。
「普通にフルーチェでも作って食べて帰ろうか」的な空気
が俺をかすめたので、それを手にとってみる。
するとそこに書かれていた説明。
「フルーチェはフルーツに含まれるペクチンと
牛乳のカルシウムによって固まります。」
なんと!
ペクチンが固まる要因は、牛乳というかカルシウムだったのか!!
それに気付いた俺はすぐさまそのドラッグストアでカルシウムを購入。
すぐさま講義室に戻る。
「みんな! カルシウムがあれば、ペクチンが固まってくれるぞ!!」

ちなみにカルシウムとか高くて買えないので、
脱脂粉乳で代用しました。
でもこれなら粉末なので、これ以上液っぽくならなくて済む。
さっそく大量に投入して、いま一度かきまぜる!
頼む…。 固まってくれ…!!!

ま、わかってたけどな。

「俺達、貴重な休日に何やってんだろうな…」
急速にテンションダウンする僕ら。
バケツの中身も色々なものが入りすぎて
すっかりカオスになっている。
疲れきった僕らは、雲ひとつない澄んだ青空を見上げる。
そして誰かが言った。
「もうさ、固まれば良くね?」

最 終 兵 器 登 場。
全てを黙殺した大人の面持ちで、
まるまる一袋ぶんの小麦粉を投入する僕ら。
それまで混ぜ合わせてきた全てを、
素材に無条件に硬化させる、
他の追随を許さない
最強の防御力無視攻撃。
これが、
絶大なるグルテンの力か…!!

わーい、固まったゾ☆
(かなり強引にネ☆)
とにかく、ようやくこれで、
(なんか途中から色々と方向性を誤ってた気がするけど)
巨大ねるねるねるね、完成だ!!

喜びの記念撮影。
みんな、笑顔を隠せません。
なんだか真ん中の男が抱えている僕らが作った努力の結晶、
セメントか何かにしか見えないんですが気のせいです。

さあそれでは早速運命の試食!!
緊張の一瞬です!!
なんてったって原因不明の灰色ですからね!!
そりゃあ緊張もしますよ!!

もちろん、これにつける粉飴もふんだんに用意!!
これにつけて一気に食べるぞ!!

いっただっきまーす!!

ま、わかってたけどな。

フー、みんな、だらしないぜ。
ここは俺がサイト管理者としての意地を見せてやろうじゃないか。
思いっきり食ってやるぜ、この俺がな!

そして見せてやる、最高のリアクショ…

!!!!
な、なんだ、この全身に響き渡る
刺激的なフレーバーはァァッ!?

パーティー、全滅。
長く続いたこの戦い。ついにそれが幕を閉じた。
残念なことにこの戦は敗北に終わったが、
こうやって人は少しずつ成長していくのだ。
経験は宝である。

ちなみにこれが今回つくった
巨大ねるねるねるね(の様なもの)と
本物のねるねるねるねとの対比。
ちなみに何故か色は真っ灰色で、
近付くと危険な男の香りがするから要注意だ。

捨てずにとっておいた卵黄も、
いつのまにかめちゃめちゃ黄色いミルクセーキと
化していた。卵黄の比率がおかしい。

そりゃテニス部の女の子たちもびっくりですよ。
(凄い不思議なものを見る目で見てました)

ありがとう、ねるねるねるね。
そしてさようなら、ねるねるねるね。
僕たちは君と戦ったあの時間を、決して忘れることはないよ。