インディーズ・ゲーム開発者のイベントに参加する

2009-07-21

0.きっかけ

僕の手には今、「GENETOS」「LifeCycle」という二つの作りかけのゲームがある。
どちらもあらかた出来あがってはいるのだが、本当にこれでいいのだろうかという、
言わば「最後の詰め」で悩んでいる感じだ。

そんな中、アマチュアでゲームを作っている人たちが集まってゲームを開発するという
イベントを見つけた。丼さんという人が主催する、
「ゲーム作者強制労働所」という何とも怖い響きのイベントだ。

狭い世界に生きてきた僕は、今までこういうイベントに参加したことがなかった。
しかし就職活動を始めて色々な人に会う中で、「もっとたくさんの人と話をしなきゃダメだ」
と思うようになっていた。

しかも、このイベントには丼さんなど、僕がリスペクトしている人も参加するようだ。
よし、このイベントに参加して、自分のゲームの名前を売るとともに、
ゲームを作る側の人からの意見をもらおう。
そう決心した僕はイベントに参加申し込みをし、GENETOS と LifeCycle を引っさげて、
先日の土曜日に秋葉原まで行ってきた。

実は、この間ノートパソコンを新しく買ったのは、このイベントのためでもあったのだ。
起動まで10分かかり、電源コードを外すと1分で落ちるようなノートパソコンでは、
開発イベントになど参加できるはずがない。


1.リスペクトしてる人と会う

僕は趣味でゲームを作って、ウェブで公開している。
ものを作っていると、同じように世の中に作品をアウトプットしている人たちに対して
親近感がわいてくる。特にオリジナリティのある、ハイクオリティな作品を作っている人には、
尊敬の念さえ抱く。

当然、僕と同じようにゲームを作ってウェブで公開している人もいるわけで、
その中には個人的にリスペクトしている人もいるのだ。

今回、その中でも丼さんおめがさん という人がイベントに参加していた。

丼さんは「ナノスマイルズ」という独特な世界観のゲームを作った人で、
一人で絵も描くし、音楽も作曲している。さらに、 「EngRish Games」という
日本のインディーズゲームを英語で海外に紹介するという取り組みもやっている。
まさに、多くの面で僕が見習いたいクリエイターだ。

おめがさんは「EveryExtend」という斬新なシステムのシューティング(?)ゲームを作った人だ。
僕はこのゲームのシステムに多大なる驚きと感動(センスオブワンダー)を感じた。
このゲームは企業の目にとまり、 PSP 版(Every Extend Extra)と、
XBOX360 版(Every Extend Extra Extreme)が発売されたほどなので、
きっと知っている人もいるだろう。

この二人に会って、自分のゲームを見てもらいたい。
この二人が、ゲームやアートに対して考えていることを聞いてみたい。
その思いが、このイベントに参加した要因の一つでもあった。


2.イベントに参加してみて思ったこと

参加する前は、「なんか変に“秋葉原”っぽい感じだったらどうしよう…」
と心配していたが、それほどでもなかった。まあ確かに参加者の多くが
色白の僕よりも色白だったり、集合場所で突然
「お久しぶりです! 前にコミケで会いましたよね」
と言われたときは、
ええとコミケとか一度も行ったことないです すみません、
と怯んでしまったが。

参加者の中には年の近い学生の人も居たし、高校生くらいの人も居た。
あとは大体20代の社会人の人だったのかな…?

嬉しかったのは、ちらほら GENETOS の存在を知っている人がいたこと。
中には、ニコニコ動画にプレイ動画をアップしてくれたという人もいた。
僕もその動画を見たことがあって、「誰だか知らないけどありがとう」
と思っていたが、こんなところで出会うとは。

普段、ゲームを作っている人と話をする機会はそうそうないので、
このイベントはなかなか刺激的だった。
開発イベントということで、他の人がどういう環境で開発しているのかを見れるのも面白い。
(僕はと言えば、「働きたくないです」と言って専ら話をしたり見学をしたりしていた。)

他の人のゲーム作品も、これがまたアイディアに満ち溢れている。
プレゼンを見ていてぼんやり思ったのは、以下のようなところ。

・ 僕もそうだけど、みんなテキストエディタは黒背景だ
・ 開発する際に、開発用の環境(マップ作成ツールとか、専用のスクリプトとか) をちゃんと作ってる人が多いな
・ いいゲームを作っても、なかなか一般の人に知られないのが残念
・ やっぱりゲームを作ってる人と、ゲームが単に好きな人の観点は違う
・ 何も説明せずに目の前で自分のゲームをやってもらうと、見えてなかったものが見えてくる



全体的にミニゲームっぽいものを作ってる人が多かったので、
僕の紹介した GENETOS と LifeCycle はそれなりに手ごたえがあったんじゃないかなと思う。
ゲームについてあまり議論ができたわけではないが、このイベントに参加したことは
今後のゲーム制作に少なからず貢献するだろう。

特におめがさんに GENETOS をプレイしてもらって、意見をもらえたのは嬉しかった。


3.人生初、外人と英語で会話

僕はこの日、生まれて初めて外人と英語で会話をした。
なんとこのイベントに、異国の人が一人だけ参加していたのだ。
電車の中で近くにカッコいい外国人が座っていて、
「あ、この人も秋葉原で降りるんだ」と思っていたら
まさかイベントのメンバーだったとは。

しかしこの外国の方、結局最後まで名前は聞かずじまいだったので
何と呼んだらいいのか分からないのだが、日本語が話せるのかな?
と思ったら全く喋らない様子。

一体どうやってこのイベントに辿り着いたんだろうといささか気になったが、
少なくとも彼はゲームが好きな人のようだ。開発はせず、ずっと見学だけしていた。

イベント終了後、西日暮里のカフェで食事をしながら二次会という形になったのだが、
僕の右隣にはたまたまその彼が座っていた。
当然日本語を話さないので、まわりの人は話しかけない。
彼の右隣りに座っていた丼さんだけが、ちょくちょく英語で声をかけてフォローしていた。
おお、さすがは丼さんだ。

ああ、自分がまともに英語を話せたら、と僕は思った。
英語やんなきゃなぁと思ってはいるが、正直まだまだ勉強が足りない。
まして英会話など、僕はまるでしたことがないのだ。
話しかけてみたいものだが、そんな英語力で話しかけて、
相手の言っていることがさっぱりだったらどうしたらいいのか。

しかし僕は思った。今ここで声をかけなかったら、
次に英語で会話をする機会なんていつになるかわからないじゃないか。
そうだ、今が絶好のチャンスなんだ。
気がつくと右隣りにいた丼さんも席を外している。
TOEIC 570 点の僕だが、ゲームの話題だったら、
簡単な会話くらいできるかもしれない。
今こそ、英語学習のために独自に開発したソフト「帰ってきた覚える君」での
学習の成果を見せるときなんじゃないのか。

と、静かに携帯をいじる異国人の彼の隣で実に10分くらい葛藤した僕は、
一念発起し、ついに彼に声をかけた。
正直、英会話経験ゼロの僕が唇の下にピアスとかつけてるクールなネイティブ
英語で声をかけたという行為を、みんなは素直に称えてくれていいと思う。

とりあえず、様子を窺いながら
“Excuse me? Can you talk with me?”
と声をかけてみた。
いきなり話しかけられて、彼は一瞬とても驚いていたが、
すぐにウェルカムな雰囲気を出してくれた。

そのまま流暢な英語でサラサラと話しかけられそうになったので、
慌てて僕は先手を打った。
“Ah, you know, my English skill is very... low.
But I want to speak with you, ...okay?”


彼は
「もちろん、構わないよ。それに君の英語、全然大丈夫だよ」
的な返答を英語で返してくれた。
不思議なことに、授業でやるリスニングがさっぱりな僕でも、
会話になってみると案外相手の言っていることが分かるものだ。

きっと相手も難しい表現を避けてくれているのだろうが、
何より発言と発言の間にワンテンポおけるところが大きい。
予期しない文脈を立て続けに喋るリスニング問題と異なり、
日常会話では、相手の言ったことを落ち着いて解釈できる余裕があるのだ。

おお、これは何とかなるかも、と僕は期待した。

よし。とりあえず月並みな中学英語で、聞きたいことを質問してみよう。
以下に僕と彼の会話を示すが、彼の発言は日本語で示す。
読める漢字でも書けなかったりするのと同じで、
何となく意味は分かってもそれを英語で再現する能力は僕にはない。
そもそも、僕の英語力では 100% 意味は汲み取れてはいない。
「まあ大体こんなことを言ってたんだろうな」くらいの気持ちで読んでほしい。

俺 “What kind of game do you like?”
彼「何でも好きだよ。特に FPS だね。あとはアクションとか RPG とか…」
俺 “Do you play shoot 'em up?”
彼「ああ、シューティングはかなり好きだよ。ただ、自分には難しすぎるけどね」
俺 “Oh, me too.”(笑)

逆に向こうも聞き返してきてくれた。

彼「君はどんなゲームが好きなの?」
俺 “I like shooter, and... hmm... I like unique games.”
彼「例えばどんな? PS2 のゲームだったらどれが好き?」
俺 “Ah... Do you know 大神?”
彼「オオカミ?」
俺 “It's a... Japanese-style adventure... the dog runs...”
彼「あー、多分知ってるかも。て言っても、デモを見ただけだけど。」

俺 “And I like... ANUBIS. Do you know ANUBIS?
It's a 3D robot action.”

彼「うーん、知らないな…。アヌビスっていう言葉自体は知ってるけど。」

そうだ、と思い、自分のゲームについて感想を聞いてみた。

俺 “Well, do you remember my game, GENETOS?
It's a shooter, with evolution theme, Generation-Shift...”

彼「ああ、あれね! もちろん覚えてるよ。ボスが出てきて、進化して、
バンバン撃ってるのが面白かった。」

俺 “Oh, Thanks!”

LifeCycle はかなり変なゲームだが、どう思ったのだろうか。

俺 “How do you think about my work, LifeCycle?”

言ってから、やべ、「どう思う?」は How じゃなくて What で聞くんだっけ、
と思ったが、そこらへんはちゃんと汲み取ってくれるだろう。
むしろ僕の「英語が出来ないなりに頑張っている感」が伝わってよかったかもしれない。

彼「うん、確かに少し変わってるね。けど、面白いよ!」

このとき僕には彼が “it's a pre-strange, but interesting” って言ったように聞こえた。
「pre-strange って、“ちょっと変”っていう意味かな」などと思ったのだが、
後で辞書を引いてみたらそんな単語はなかった。彼は何て言ってたんだろう。

その後、PS3 とか XBOX は持ってるの? と聞かれたので、
いやー、PS2 と DS くらいしか持ってないよと答えた。
すると彼は、彼が好きな DS のゲームを見せてくれた。
「バンガイオー魂」というゲームだった。

“BANGAI-O SPIRITS”なんて言われたので外国のゲームかと思ったら、
めちゃめちゃ日本製。トレジャーが作ったゲームだよ、と彼は教えてくれた。
トレジャーという開発チームは知っていたが、そんなゲームがあったとは知らなかった。

へえ、日本のゲームやるんだな、と思って、僕は聞いてみた。

俺 “What is your favorite Japanese game?”
彼「んー、色々あるけど、一番はワンダと巨像かな」

このタイトルだけは日本語ではっきりと「ワンダと巨像」と言った。
ワンダと巨像好きな僕は思わずテンションが上がってしまった。

俺 “Oh, ワンダと巨像!! I like it, too!!”

その後、どの巨像が一番好き? と聞かれたので、15番目のやつ、と答えた。
15番目がどういう奴かを説明するボキャブラリーが僕にはなかったが、
単語と身振りで頑張っていたら彼が
「ああ、あの上から飛び降りて手にしがみつくやつね!」
と言ってくれたので、きっと伝わったのだろう。

彼は「自分は7番目か8番目かなんかの、水中で戦うやつが一番嫌いだな」
と言っていた。「すぐ振り放されて、イライラする!」

ワンダと巨像の制作チームと言えば、
これまた僕が大好きな「ICO」というゲームを作ったところだ。

彼「あのチームのゲームはいいよね。ICO は知ってる?」
俺 “Of course! ICO is my most favorite game. That graphics is beautiful...”

ICO はクリアしたことはないんだけど、と彼は ICO のチームの次回作を教えてくれた。
「The Last Guardian」 (日本語のタイトルは「人喰いの大鷲トリコ」)というゲームだ。
ICO と違ってパートナー(companion)が girl じゃなくてグリフォンなんだ、
と説明してくれた。携帯でムービーも見せてくれた。

携帯が出てきたので、自分の携帯アプリや Flash なども見せておこうと思った。
まずは待ち受けで英単語を表示する「いつでも英単語」だ。
…待ち受けって何て言えばいいんだ。

俺 “OK, I have to study English.”
彼「ははは…」
俺 “(携帯を開いて)Look! I made this... software...
to study English, memorize English words...”

彼「いいね。それは君の助けになってるかい?」
俺 “Maybe... a little.”
彼「OK.」

俺 “I also make the game... for a mobile-phone.”
彼「うん。」

僕はアプリを起動して、「世界はもはや遅すぎる」を見せた。

俺 “Ah, the title mean... the world is too late.”

彼はひとつ間を置いてから「OK.」と言った。
まあ確かに、日本語で言っても変なタイトルだしな…

僕は“Avoid the pillar, and correct blue sphere”と言って、
実際に彼にプレイしてもらった。初めて外人が「世界はもはや遅すぎる」
をやっているのを見た。

ただ、つたない英語では必殺技の説明をするのが大変だった。
そもそも必殺技っていう英語、あるのか?

俺 “The character has a special action. For example,
correct items up to one hundred and... push the trigger!”


そう言って僕は、時間を止めるというキャラクターの能力を見せた。
“Time is stopped!”

画面のスクロールが止まったのを見て彼はきょとんとしていたが、
一定時間後に画面が動き出したのを見て
“OK, I see.”と言っていた。

とまあ、こんな感じでなんとかコミュニケーションをとることができた。
僕程度の英語力でも、いざ話してみるとそれなりにどうにかなるものだ。
勇気を出して声をかけて良かった、と心底思う。

彼とは二次会を抜けて帰るタイミングもたまたま一緒になったので、
駅までの道でまた少し話した。
「家はここからは遠いの? どれくらい時間かかる?」
と聞かれたので、“It took about 2 hours.”と言うと、
「2 hours!? 遠いね!」と驚いていた。

ホントは電車で 2 時間弱のところを高速バスを使えば 1 時間なのだが、
まあそんなことをいちいち説明するのもまどろっこしい。
2 時間と言った方が距離感が伝わっていいだろう。

それにしても、この人のおかげで初の英会話を体験することができたわけだ。
僕は最後に、感謝の気持ちを伝えておくことにした。

俺 “Thanks, today... えーと、today's talking...”
彼「いやいや、こっちも楽しかったよ」
俺 “It is the first time for me... to do the English conversation.”
彼「ホントに? 君の英語、全然悪くなかったよ」
俺 “Thanks! I'm grateful to you!”

以上が、僕が彼と話した大まかな内容だ。
この日の経験は、僕の今後の英語学習を強く鼓舞してくれることだろう。


4.おわりに

なんか「英会話できたのが一番の収穫!」みたいな文面になってしまったが、
こうした経験が出来たのも強制労働所というイベントがあったからだ。
ホントに「ゲームは国境を越えるなぁ」と思った一日だった。

企画と運営をやってくれた丼さんには深く感謝します!