アプリオブザイヤー2008の表彰式に出席したときの記録、その2。
長めの待ち時間を経て、ようやく式が始まる。
式が行われる会場の前の廊下には、関係者の人が集まっていた。
わずかだがテレビ局の人も来ていた。ローカルかと思ったら日テレらしい。
式全体の規模としては30人くらいだったように思う。
待機していたら、スタッフの人たちから名刺をもらった。
普段メールでやりとりをしている人が、実際に会ってみたら
全然イメージが違った。恐らくそれは向こうも同じだろう。
やはり社員に実際に会うと会わないとでは、会社に対する印象が大きく変わる。
今までは無機質だったメールの文面も、表彰式後は親しみのあるものに
思えてくるから不思議だ。やはりコミュニケーションは重要だなぁと思う。
あとワンボタンゲームとして流行った「チャリ走」の作者の
護美童子(ごみどうじ)さんも居て、色々と話ができた。
僕もチャリ走は一時期よくプレイしたものだが、
向こうも僕のゲームをプレイしてくれていた。
表彰式は16時から始まった。
ちなみにマンガのコンテストの方で賞をとった人たちは全員女性だった。
見事に男性・女性が分かれる形。まあ妥当な結果だろう。
携帯マンガって携帯小説の延長にあるんだと思うが、
携帯小説とかこういうのは女性がやるイメージが強い。
式が始まると、特別ゲストとしてモデルの益若つばささんという人が登場した。
デザインなども手がける人気モデルで、その経済効果は100億とも言われているらしい。
途端に元気良くシャッターをきるカメラマンの人たち。
なるほど、マスコミ向けにこういう華のあるゲストが必要なんだな。
ニュースに取り上げられるときはこのモデルさんの画が使われるのだろう。
マンガ、アプリの順に下の賞の人から壇上に呼ばれ、
クリスタルの盾と賞金目録を渡されてコメントをもらった。
また、受賞者自身もコメントを求められた。
新人賞と入賞はそれぞれ協賛会社のスタッフによる審査員から渡され、
優秀賞はスパイシーソフトの山田社長から渡される。
そして最優秀賞を渡すのはモデルの益若さんだった。
おいおいそこ社長じゃなくてゲストなのかよとも思ったが、
まあこういうものなんだろう。
ちなみにみんながペンネームで出席している中、
僕だけ名前が本名そのままの「Tatsuya Koyama」。
せっかくの機会なので、コメントでも
「どうも、この度 世界はもはや遅すぎるという
変な名前のゲームを作った小山と言います。」
と自分の名前と作品名をアピールしておいた。
「小さい山と書いて小山です」
とまで念を押した。
ほら、日本人ってもっとアピールすることが必要だと思うわけよ。
ちなみに僕のコメントの内容だが、
みんなが真面目にちゃんとしたことを言っていたので、逆に
「いやー、ラッキーだったなぁと思います!」
と軽いノリにしておいた。
実際、僕が賞をもらえたのは突き詰めればただのラッキーだろう。
でもそのラッキーの確率が上がるように、今後も多くの作品を
作っていけたらいいのかな、と思う。
一通りの授賞が終わると、司会の女の人が
「それでは皆様、ここからは緊張をほぐしていただいて、
益若つばささんのトークショーに参りたいと思います」
などと言い放った。
なるほど、テレビでは一般的にこういう映像が使われるんだな、
と受賞者の僕たちは納得する。
そしてそのまま、誰とも知らないモデルさんのトークを聞くことになる。
トークの途中で、マンガの最優秀賞をとった人が
似顔絵を渡したりしていた。
女の子たちは人気のモデルさんを見ていて嬉しそうだったが、
華やかなモデルさんとは住む世界の違う僕たち男性陣は、
明後日の方向を見ながらただボーっと話を聞いていた。
トークが終了。そして
「それでは続きまして、フォトセッションに参りたいと思います。」
なんだか嫌な予感がする。
「ではまず初めに益若さんと山田社長と
アプリの受賞者4名で写真を撮って頂いて、
次に益若さんと山田社長とマンガの受賞者4名で撮って頂きます」
「そして、受賞者8名と益若さんで撮って頂いた後に…
益若さん一人での撮影に入りたいと思います!」
もういいよ、益若さんだけ撮ってりゃいいじゃんかよと
喉まで出かかったが、それを飲み込んだ僕は大人の対応をしたと思う。
最終的には、
「それでは最後に囲み取材になりますので、
プレスの方たちと益若さん以外の方はご退出願います」
と言われ、
会場には益若さんとマスコミの人たちだけが残った。
俺たちって何だったのかな、という淡い思いを抱えながら、
僕らはその後の懇親会の時間を待った。
まとめると、この表彰式はまあ、何というか益若さんだった。
その後は夜景の綺麗なドローイングルームという部屋で、
立食形式の懇親会が行われた。
昼に続き、高級そうな食事が並び、
ホテルのスタッフさんが「良ければおとり致しましょうか」とか
「お飲み物をどうぞ」などと声をかけてきたりする。
普段の生活ではなかなか味わえない高級感を味わいつつ、
受賞者のAzaliaさんと
「家に帰ったら逆にお茶漬けとか食いたくなりますね」
などとひそかに語り合った。
開始後すぐに、司会者の人が
「皆様、ここで益若さまのご入場です!」
と言い、言われる通り益若さまがご入場されてきた。
え、まだ居たんですかという言葉が喉まで出かかったが、
それを飲み込んだ僕は大人の対応をしたと思う。
そしてあの憎めない新入社員のWさんが、
「受賞者の方たちです」と益若さんに僕らを紹介してくれた。
受賞者のKYOさんが益若さんに「どんなゲームやります?」と聞くと、
益若さんは「難しいのできないから、マリカーとか、みんなでやるオセロとか…」
と答えていた。
当然の流れで、「え、受賞者の皆さんはどういうゲームやるんですか」
という話題になる。
ところが前述したように、僕以外の受賞者の人は
ゲーム作者にも関わらず、あまりゲームをやらない人たち。
「いや、ゲームとかやらないんですよね」
とKYOさんたちが言うと、向こうは驚いていた。
そりゃゲーム作ってる人がゲームやらないとか言ったら、驚くのは当たり前だ。
「いや、俺はゲームやるのも好きっすよ!」
と僕が言うと、これまた当然の流れで
「どんなゲームやるんですか?」と聞かれる。
「色々やりますけど、そうですね… 変わったゲームが好きですね」
と正直に答えると、「例えばどんな?」と聞かれる。
僕はマイナーでも、個性のあるゲームが好きなのだ。
例えば僕の一番好きなゲームに、「ICO」というパズルアクションゲームがある。
やったことのある人はわかると思うが、独自の世界観を持った美しいゲームだ。
「知らないとは思いますけど… イコってゲーム知ってます?」
と聞く僕。
残念だが、その場にいた人たちは誰もICOを知らなかった。
「どんなゲームですか?」と聞かれたので
誤解を恐れずに
「そうッスね… 女の子の手を引きながら走ってくゲームです」
と答えると、益若さんに
「え… ときメモ系?」
と、恐れるべき誤解を抱かれたので、
「全然違います…」
と言って、早々にその話題は切り上げた。
どうやらこの場でICOというのはチョイスを誤ったようだ。
ところで、その場にはスパイシーソフトの社員さんをはじめ、色々な人がいたのだが、
僕が目をつけていたのは株式会社ユビキタスエンターテインメントの
布留川英一さんという人物。
この人は、ん・ぱか工房
という様々な開発規格の仕様を
まとめているサイトの作者で、プロで携帯ゲームの開発なんかもやっている人だ。
このサイトは、携帯アプリやFlashアプリの開発者だったら誰でも一度は
お目にかかったことがあるんじゃないかというほど、
有益な情報が数多くまとめられている。
布留川さんが書いた
オープンアプリの開発講座
のページも、
非常にわかりやすく丁寧にまとめられているのでオススメである。
僕も布留川さんのサイトにはお世話になっていたので、
表彰式で審査員席に座っているのを見たときから
「あ、あの布留川さんだ! 懇親会で絶対話しかけよう」と思っていた。
こんなことを言ったら生意気に聞こえるだろうが、
懇親会の会場に居た人物の中で、一番僕にとって価値のある分野の
知識や情報を持っていると思えたのが、布留川さんだったのだ。
近づいて「布留川さんですよね? 自分、小山というただの学生ですが…」
と話しかけると、布留川さんの第一声は
「おめでとうございます」だった。
布留川さんは実際に携帯アプリなどの開発に携わる一方、
海外を視野に入れたマーケティングなどにも関わっている方のようだ。
色々と、今の自分にとってためになる話が聞けた。
・ 携帯とかアプリとかの規格の統一は、これから始まろうとはしている
・ iPhoneとかアンドロイドとか、今は何が淘汰されて何が生き残るか様子見の状態
・ FlashLiteはまだまだリッチなバージョンに追いついてない感じ
・ アメリカとか向こうはそんなにネットインフラの環境が良くない
・ 日本や韓国のように狭くないと、なかなか高速回線を引けない
・ 日本だと凝ったゲームが好まれるけど、海外はシンプルじゃないとなかなかダウンロードされない
・ 端末にダウンロードしてゲームをやるのは、海外だとほとんどアメリカくらい。
・ 北欧はなかなかやらないし、韓国だと母数が少ない
・ だからマーケティングの対象としては日本とアメリカのふたつが大きい
・ 最近は携帯端末でもタッチパネルが増えている
・ タッチパネルだと、キーボードなどをソフトでできるから言語の切り替えが楽
・ ただし日本人はなかなか従来のキーボードを捨てられない
・ 日本と海外で価値観が違うから、両方で売れるものを作るのは難しい
また、話を聞くだけではなく、「自分普段はこういうゲームとか作ってるんですよ」と
周りの人に自分の作品を紹介することもできた。
就職活動のときに作っていた自己アピール用の資料が役に立った。
スパイシーソフトの社長さんもじきじきに僕ら受賞者のところへ挨拶に来た。
思ってたより真面目そうというか少し腰の低い感じで
「表彰式はどうでしたか? 至らない点などあれば…」
などと聞いてくれて、好印象だった。
7時半くらいに懇親会は終了し、受賞者の人たちと一緒に新宿駅まで歩いて帰った。
何だかんだで色々あったが、総合的に見て意義のある1日になったと思う。
特に自分としては、布留川さんと色々な話ができたのが大きい。
スパイシーソフトさんは規模も小さく、社員も含めて若い企業だと思うが、
是非これからも頑張ってもらいたい。
クリエイターにとって、アプリゲットのような作品公開の場は貴重である。
受賞者のうち1人と別れ、残りの3人で一緒に駅まで歩いた。
全体的に楽しかったが、何となく釈然としない気持ちが僕らの中にはあった。
なんだか表彰式に出た実感があまりないような、そんな感じがした。
KYOさんが「なんか、家に帰ってこたつに入ったら、何だったんだろうって
思っちゃう気がするんですよね…」と言ったが、確かにそうだと思った。
今回の表彰式は、要するに、何だったのか。
とりあえず僕ら受賞者の中では
「何というか、益若さんだった」
という結論に達して、今回の締めとすることにした。
表彰式を開いてくれた皆さん、どうもありがとうございました~。