ある日の学校で、朝の講義が早く終わった僕らは時間を持て余していた。
そんな時間を何か面白いことに使おうと、
僕はゼミ室でだらだらしている友人らにある提案を持ちかけた。
「携帯の予測変換連打して、どんな文章出てくるかやろーぜ!」
創発性に満ち溢れ、さらにその人が普段どんな文章を打っているかという
人間性さえ垣間見ることができるこの素晴らしい提案に、仲間達は
「えー、めんどくさいし」
「つーか何年も前にやったし」
「はいはい面白い面白い」
「ごめんちょっと今 就職関係のこと調べたいから」
などと賛美の声をあげてくれた。
…その後、とりあえず何人かは参加してくれたものの、
思った以上に盛り上がらないこと盛り上がらないこと。
きっとこれが高1とか高2とかいう若い頃だったら
こんなくだらない遊びでも相当テンションが上がったのだろう。
失われていく幼き頃の好奇心にどこか寂しさを感じた21の僕は、
現実を見つめ、これからやって来る社会の壁に
真剣に立ち向かうことを決意した。
めでたし めでたし。
と、むげに終わってしまうのもつまらないので、
一応その時に予測変換だけで作った文章をここに残しておこう。
どうしようもなく暇な時間をつぶしたい時にでも見て、
鼻で笑って頂ければこの文章達も本望だろうと思う。
まず、とりあえず僕の携帯でやってみた予想変換。
「あ」とだけ打ち、あとは予測変換のトップにあるものを連打してみた。
あるほうに頼む!は完全に書いてあるほうに頼む!
この問題か不安なんで、サイトに書いてあるほうに頼む!
どうやらこの予測変換遊びには、
「意外とすぐループする」という落とし穴があるようだ。
特に良くないのはこんな例。
らしいんだけどねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇ…
以下無限ループ。「ねぇ」を2回打つなんてしたことあったっけ…?
ハッピーだぜ! 勉強量の面倒なのに、今日来ないのか!
なんかわからないけど近い過去に「ハッピーだぜ!」とか打っていたらしい。
何ともハッピーな奴だな、俺は。
いまいち面白くならないので、友人の予測変換文章を見てみることにした。
以下、友人ピエール氏の作品。
明日はまだないのねします。
帰りは食事バランス感覚麻痺します?
30時半過ぎに乗る?
圧力かな、朝早かったりしても!
おお、やはり自分のものとは違ったテイストでちょっと面白い!
「30時半過ぎ」とかいつだよ、とツッこみたくなる。
彼の予測変換は比較的短いサイクルで句点や「!?」マークが来るようだ。
高いな!
短いな!
いただいた?
何を。
八幡になる?
何が?
私は日本語を通って、いつでもいい天気を送りました。
これはなかなかカオスだ。この文章には絵文字すら入っていた。
そうか。単純にトップに出てきたものだけを選んでいくと、
すぐにループしまうのは考えてみれば当然の話だ。
ならば逆に、「最下位に出てきたものを選んで行く」
ようにすれば、長く続く上に思いもよらない文章ができるのではないか。
そう思い、早速自分の携帯でやってみた。
「あ」から始めて、候補の最下位のものを選んでいく。
1時あるほど難しい時だと入っとけば行っちゃおうっていう目あるときその内容達ありきっちゃおかしらん言ったらばなっとく日等思っちまいますものね。
やはり句点まで長い文章になった。いや、もはや文章と呼べるかも謎だ。
確かにうまいこと「一番遠い予測」を繰り返しているようだ。
僕は普段「かしらん」なんて打たないし
「思っちまいますものね」なんて不自然な日本語も
そうそう聞くものではない。
くだらない遊びのようだが、人間がメールを打つのを見て
いわば「学習」した予測変換という機能が、
そのデータベースをもとに次々と文章を生成していくというのは、
なかなか興味深い振る舞いだ。
何か工夫したら「発想するシステム」なんかの研究対象になるかもしれない。
気づけばもうすぐ次の授業も始まる時間だ。
ここで最後に、静かに携帯の画面を見つめていた
M田氏の予測変換を見せてもらった。
有効活用法学部案内人規模で君津行く、二投目以降も頑張ります。
マガジンハウスクリーニングしてくれーしてくれーしてくれーしてくれーしてくれー
テトリスの篤姫がお送りします。
エスカレーターを配る。
足Aです。
直純の霊が見えました。
な、なんだこれは。
この明らかに僕らのそれとは違うクオリティは。
M田氏… 君は一体どんなメールライフを送っていると言うんだ。
友人の隠された一面も見ることができる知的な遊び、予測変換。
皆さんも是非。