ファミレスでちょっとした悪戯

2006-09-22

9月22日、金曜日。高専4年の前期期末試験が始まった。
土日をはさんで29日金曜日までの、合計6日間。
全部で16教科の試験だ。

最初の2教科が終わり、翌日が土曜だということもあって、
「とりあえずテスト初日終了打ち上げ」に行くことにした。

もっとも、打ち上げと言っても単にカラオケか、メシを食いに行くだけである。
(ちなみに僕らの間では、
「実験実習でようやくまともな測定値が出た打ち上げ」
「面倒なプレゼンが終わってせいせいしたぜ打ち上げ」など、
様々な打ち上げが存在する。)


テスト終了後少しだけ勉強をして、友人と4人で夕食を食べに行くことにした。


僕らは学生という下流階級の存在なので、ついリーズナブルな価格レベルの
ファミレス(例:サイゼリヤとかサイゼリヤ)に足を運んでしまうのだが、
今日は趣向を変えてもう少しいい値段の店に入ることにした。

これから休日を使ってテスト勉強をしなければならないので、
気合を入れる意味でも、普段よりがっつり食うか、という流れに。

各々、ハンバーグやらパスタやら、ポテトやらサラダやらを頼んだ。


初日のテストの結果などを語らいながら、食事をする僕ら。
一通り食べ終わった後、気を利かせて友人が使用した皿を重ね始めたが、
ケチャップの入っていた小さな容器は重ねることができない形状だったため、
それをもてあましていた。

「ちょっと貸してみ」と言い、何となく皿の上にその容器を置く俺。
すると、僕らはその皿を見て何かを直感した。



…顔に見える。



なんだか知らないが、丸い皿に上においた2つの容器が、目に見えてきたのだ。
しかも皿の端に残ったままのケチャップが、いい感じに口のような形をしている。

面白くなった俺は、スープバーの横に据えてあったコーンフレークを2粒とってきて
皿の上の容器に乗せ、サラダの皿に残っていたニンジンの細切りを皿の上に乗せてみた。
するとあら不思議。






とてもファンシーな顔が出来上がりました。





なんか普通に(特にケチャップまわりが)気持ち悪い表情を見て、笑う僕ら。
くだらないが、こういうことはいくつになっても無性に面白いものだ。
(※来年、僕らは20歳になります)





「いやー、今日もt教官はテスト中によく喋ってたなぁ」
などという平穏な談話の中に、さりげなく溶け込むイレギュラーな存在。
隠れてない。存在隠しきれてないよ。




さすがに、あんまり露骨にこういうものを置いておくのも気がひけたので、
「まとめた食器の中に、さりげなく存在する」状況を作り出すことにする。

みんなでうきうき気分で、食器を例のアレの周りに近づけてカモフラージュする。
楽しそうにその作業をする僕らは、みんな少年の目をしていた。
(※来年、僕らは20歳になります)


スープ用の丸い器を例のアレのそばに近づけて、カモフラージュが完了した。









あ、ダメだ、これ。








カモフラージュどころか、逆に存在感を増している不敵な表情。
しかもその造詣は、物凄く触れてはいけないような気がする
あの禁忌のフォルム
だ。これはヤバい。


こころなしか、傍を通り過ぎる店員にビクつき始める僕ら。
しかし、せっかくのボビー(たった今命名)との出会いを、無駄にしたくはない。
ボビーの存在を自らの手で消すことなど、もう僕らにはできない。

だから僕らは、せめてボビーとの思い出を僕らだけのものにしようと、
ボビーのまわりにカモフラージュのための食器を並べ始めた。

店員が気づいてくれなくたっていい。機械的に皿を片付けられたっていい。
僕らの手でボビーは生まれ、 ボビーは僕らに少年の心を取り戻させてくれた。
その事実だけがあればいいのだ。僕らは穏やかな気持ちだった。






かくして、皿や器、コップをアトランダムに散らばせることで、
僕らはボビーを食器の中に隠した。
木を隠すなら森の中に、食器を隠すなら食器の中に。
横から見る限り全く気づかないほど、ボビーの隠蔽は完璧だった。


正直店員のリアクションが見たいという気持ちが無かったわけではない。
だが、僕らももう来年20歳になる大人だ。
このまま、潔く引くことにした。
(※大人はこんなことをしません)


仲間内で料金を精算していると、女性2人組の新しい客が、
僕らの隣の席に座った。

心なしか、僕らのテーブルを見て
一瞬引きつったような表情を見せる女性客。
何故だ。
一体何がおかしいというのだ。
ボビーは完全に存在を隠した。涙をのんで食器の中に埋もれさせたというのに。


不思議に思いながらも、荷物を持ち上げ、テーブルを後にしようとする僕ら。
去り際に、後ろ髪を引かれる思いでもう一度だけ、
テーブル正面(女性客のいる方向)から自分達のテーブルを見た。
























すいません、わざとです。












いやー、なんか出ベソに手足までつけちゃって、
もう完全に作為的な状況。
ケチャップ入れの上のコーンフレークもさることながら、
おしぼりの上のスプーンとかもうフォローしようがない。




とりあえず、テーブルに置いてあったアンケートの紙に
「お仕事ご苦労様です  客」
と書き残して、僕らは店を後にした。


胸に残る暖かい気持ちと、やるせない空しさを抱いて。